• 103 / 248 ページ
百合菜は顔を上げた。

「謝るのは私の方だよ……し……翔くんごめん」

心の中のわだかまりがスッと溶けていったような気がした。

「じゃあ……俺達前みたいに戻れるかな……?」

「遅すぎたよ、翔くん……」

「え……?」

百合菜の言っている意味が分からない。

雅也も渡も、ましてや親友の静香や美紀でさえポカンとしている。

「俺達さっきから付き合うことになったから」

俺は声のした方を見た。あいつは……。

「如月 令志…」

隣のクラスの頭脳明晰・運動神経抜群・イケメンでまさに非の打ち所がない男だ。

「う、嘘だろ……?」

俺は突き付けられた真実を受け入れられなかった。

百合菜も目を俯かせてポツリと呟いた。

「ホントだよ。令志君と私は……付き合ってるの」

俺は体全体に強い衝撃を受けた。
ショックだけではない。令志に殴られて吹っ飛ばされたのだ。

「てめぇ!」

渡と雅也は敵意を剥き出しにして令志を睨み付ける。

「二度と百合菜に近づくな。次は容赦しない」

俺は自分の非力さを歎いた。

全ては……百合菜と俺……お互いの嫉妬が招いた残酷な結果だった。

もっと早く気持ちを告げていれば良かった。だけど、時間は戻ってこない。

どこで、間違っていったんだろう。
俺達、もう、戻れないのか……?

更新日:2010-05-03 20:18:41

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook