迷える山羊

 これは、とある家族のひと夏、そして5年間の物語である。

 物語は2023年、名家・桃山(ももやま)家の輝美(てるみ)の結婚式から始まる。
 夕陽の綺麗なチャペルで家族に祝福されて式を挙げた輝美のもとに、差出人不明の手紙が送られてくる。
 そこには「私は変・アソシエイションの水蜜桃こと桃山輝美を絶対に許さない」と書かれていた。

 時は5年前に遡る。桃山輝美は大学3年生で、学業の傍ら「変・アソシエイション」というリアクション芸を中心とした動画をサイト「ユアチューン」にアップする配信者「チューナー」として活動していた。
 しかし、ある日輝美の祖父で外資系生活雑貨メーカーの日本法人社長を務めた壱(はじめ)が失踪する事件が起こる。壱の娘で輝美の母である佐代子(さよこ)は全ての責任を輝美に押し付ける。
 輝美は自分への疑いを晴らすために祖父を探す途中で謎の男に連れられ、自分が通う大学のカウンセリングルームにやって来る。輝美をここに連れてきた男・里中麦秋(さとなか ばくしゅう)は大学院の博士課程に在籍しながら警察の捜査にも協力する犯罪心理学の研究者であった。
 麦秋は輝美に犯行は不可能であると言い、桃山家の陰謀と真犯人を解き明かさないかと持ちかける。


2022/02/15 日間ランキング2位頂きました。ありがとうございます。