鏡鱗

「私には嫌いなものが多すぎる・・・。」

少女は小さい頃から人ごみやうるさい音が嫌いだった。
商店街に座り込む少女を置いて遠ざかる家族、耳をふさぐ少女の瞼にオレンジの光が届く。それと同時に、「私には嫌いなものが多すぎる・・・。」と、誰かが耳元でささやいた。目を開けるとその光は少女の足元に落ちて、人ごみのなかを川の魚のように泳いでいった。地面を泳ぐ光を追いかけていくと、父親に抱きかかえられてしまう。そして、少女は父親の肩越しに、追いかけた光がある店先に掛けられた鏡に入るのを見た。

店に名前はなかった。
人ごみの映像と共に少女の記憶からもすぐに消えた。

これは、国の法律が変わって16歳が大人になる時に、その鏡を見つけた時に、少女の気持ちが溢れ出して、少女の世界を満たして、世界が少女を受け入れてくれるまでの物語!!

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