辻征夫(貨物船)の全俳句と俳諧詩(一部)の解釈

 夏目漱石のユーモア俳句を継承する俳人の代表格の一人が辻征夫である。辻の俳号は銀河鉄道でもなく、ジェット機でもなく、貨物船である。スピードと豪華さを競う世の中にあって、大洋をゆっくり眺めながら進む錆の浮き出た船である。面白い俳句を味わいたい読者には、貨物船の旅をお勧めする。

 日本の詩壇に危機を感じ取った詩人12人が集まって、面白俳句に挑戦する中で詩に刺激を与えらえるようにと、余白会を作り活動した。このグループには詩人の谷川俊太郎氏もいたが最もユニークであったのは貨物船だと思う。そのユニークさの余り、仲間からもあまり理解されなかったくらいだが、谷川俊太郎氏は違っていた。
 辻は面白い俳句と詩を融合した俳諧詩を発明した。この発明品をまとめたものが1996年に出した「俳諧辻詩集」である。この詩集は同年、現代詩花椿賞と萩原朔太郎賞をダブルで受賞した。その後も面白い俳句を作り続けたが、1999年に難病を発症して60歳で他界した。

 詩人貨物船が生涯に作った俳句238句にはユーモアと哀愁があふれている。同じ面白さを絵画で追求している画家のホクサイマチス(笹崎達夫)がこれらを解釈しながら紹介する。