懸衣翁の憂鬱

【懸衣翁の憂鬱・自己紹介】   2014.05.30

 死後の世界に赴く途次、三途の川のほとりに衣領樹と云うところがあります。
奪衣婆と云った方が、分かりやすいかもしれません。と言ってもそこまで行って帰ってきた人はおりませんのに「ああ あそこ」と知っている人がいるのは、何故なのか不思議です。


 かく言うわたくしは懸衣翁と申します。
 冥土では影のうす~い存在でして、「ああ、あれね」と一言で終わってしまう存在です。
奪衣婆様が脱がした着物を木に掛け重さを量り記録するあの「オジン」です。
実はこの場所は冥界のスタッフに人気の場所なのです。


そう、奪衣婆様のお側で仕事が出来るからです。
意外と知られていませんが、 奪衣婆様、閻魔様に次いでの冥界の人気者。
普通でしたら閻魔様とまで行かなくても、せめてもう少し華々しい仕事がないかと思うでしょうが生来が臆病の引っ込み思案の根暗の人見知りなので
「お前は今日からここだ!」

と閻魔様に押し付けられた時は、もう嬉しくて嬉しくて。
 ところがさにあらず、いざ赴任しますと結構色々とありまして、憂鬱になるばかりで老骨のせいで衣領樹の周りはどんよりと暗くなってしまいました。


 時々愚痴をこぼして憂さを晴らすために来る場所がここ【飲み屋】


数ある【飲み屋】の中でも、とびっきり 裏寂れたところにある店が老骨の憩いの場所。
さてどんな話になりますことやら