陰影

 4月のその朝、その子を見かけたとき、あっ、と俺は思った。
 いつかどこかで会ったことがある、と。
 それがどこでどんな風に出会ったのか、まったく分からない。ただ、淡い何かの影がかすめたような気がした。
 或いは、それは単なる‘一目惚れ’というものかもしれない。

目次