• 3 / 91 ページ

第1話-1章 始まり-start-

「おーっス。遅れてすまん」
俺は軽口を叩きながら教室のドアを開ける。中には俺と同じくらいの男女4人が俺の方を見据えていた。
「遅いぜ大将ォ!何やってたんだ?もしかしてうちのクラスのアリサを口説いてたとか?」
奴から漏れた名前の主を想像して、ゴリラと食パンを連想した。
「うるさいなエスク。お前、口が開く度にその話題をするなよ。
つーかお前の趣味は色々おかしい」
初めてアリサを見たときは、「そういう人類」が発達した世界から来たと思っていたが、皮肉にも彼女は俺と同じ世界の住民だった。
しかも、名前が「アリサ」だぞ?
明らかに名前負けだ。
「じょ、ジョーダンだって!ちょっと大将をからかっただけさ」
「で、アンタが遅れた理由って何なの?まさか…」
隣の色っぽい女の人が質問をしてくる。
「いや、エリーシェ先輩が考えてるような事じゃないっスよ。
ただ、ちょっと面倒事に巻き込まれてね」
この人はエリーシェ先輩。俺の通っている大学のサークルの先輩だ。
そしてさっき突っかかってきたやつは、高校からの付き合いで友達のエスク。あのウザったい口が付属していなかったら、なかなかの男前だ。
「え?え?なに面倒事って?もしかしてペットボトルの天使とスチール缶の妖精が大将のハートを…」
「ああもう、うっさいエスク!話が進まねぇだろうがっ!」
「そうだよエスちゃん、ユーちゃんがお話できないよ」
割って入ってきたのは、俺と同級生のルノ。幼い感じの喋り方が特徴だ。
「ところで、俺ってなんで「ユーちゃん」なんだ?ユーって名前に入ってないのに」
「キーッ!あんたって子は、お母さんの手作りの話題をすり替えるのねっ!?」
「…」
エスクを無言で無視した。
「いいじゃん、ユーちゃんはユーちゃんだよ」
「なんじゃそりゃ」
「ところで、君のやっかい事ってなんだい?僕も少し興味があるな」
この人は、さっきまでPCをいじっていたハスタル先輩。3つ上で、大先輩だ。
知的な感じの眼鏡が俺を写す。
「…そうですね、まずはどこから話そうかな」
俺は今朝から今に至るまでの記憶を思い出す。

更新日:2011-05-23 22:33:44

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook