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センター

たかみなの口からは聞き慣れない言葉が飛び出した。
「センター?」
「そう。この学校のさ、まあいわゆる業界用語ってやつなんだけど」
「業界用語?」
ただの高校に業界もくそもない気がするが、そう表現するしかないのだろう。
「うん。ずっと昔からあるんだって。その言葉」
その言葉、とはもちろん『センター』ということである。この学校のいわゆる『伝統』らしい。
「それで? その『センター』ってのはなんなの?」
「なんかね、学校の中心、真ん中って意味なんだって」
たかみなは誰でも知っているような、単語の意味を説明した。それは言われなくてもわかる。
「まあそりゃ、センター、だからね。それで?」
「学年で1人だけ、その称号を得ることができるらしいよ」
「『センター』って称号を? なにそれ」
センターがどうとかよりもまず、称号、という突然現れた制度に笑ってしまう。
たかみなにしては面白い話だ、そう思った。
「喧嘩で強い人でも決めるの?」
「いや、私もそういうのを想像してたんだけど……スケバンみたいな。どうやら違うらしくて」
「へえー。じゃあどうすりゃなれんの、その『センター』って称号はさ」
もはや冗談半分、笑い話をするかのように聞いてみた。
「それはね……」
たかみなは随分と間をとった。こちらとしてはもう笑い話を聞くような気分なのでまるで緊張感は無い。

「友達を沢山作ればいいんだってさ」

「え? 友達?」
拍子抜けだった。もっと壮大なオチが待っていると思っていたのに、どう反応していいかわからない微妙な答えだった。
ただここで、それだけ?、とは言ってはいけない。自分の友達の数はよくわかっているつもりだ。
「面白いよね」
たかみなには何だか面白いらしい。正直何が面白いのかさっぱりわからない。
「だってさ、別に生徒会長やった人、とかじゃないんだよ? 学級委員でもないし、部活のキャプテンでもない。成績が1位でもセンターにはなれない」
「はあ……」
「つまり究極の人気者だよ。究極の。ホントに皆に認められたらもらえる称号なんだよ」
たかみなの熱弁を聞いて、なるほどな、とは思った。
生徒会長や部活や成績優秀。それらはセンターになるためのプロセスであって、別にセンターになれるわけではない。
逆に、何もなくても人気さえあればセンターになれる。そういうことだ。

更新日:2011-04-26 23:50:26

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