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「これで終わり?」
たかみなが救いを求めるような目で聞いてきた。
友達が殴り合いをしてるを見るのがつらいのだろう。
私は、張り紙に『2分4ラウンド』と書いてあったのを思い出した。
「違うよ。確か……あとこれをどっちも倒れなければ3回やるはず」
「えー! あと3回も……」
たかみなの顔が少し老けた。

第2ラウンドも変わらず相手のペースだった。
才加は第1ラウンドで大きく体力を消耗してしまったのか、試合開始直後の軽いフットワークが影をひそめた。
何とか相手の正面に立たないように回り込むが、相手のジャブ一発で足が止まってしまう。
足が止まってしまったら待っているのは相手の連打だ。
ひたすらガードで耐えるしかない。
左右からのパンチに才加の頭が揺れる。
コーナーに追い詰められそうになるところを、何とかクリンチで逃れる。
これを数回繰り返しているうちに、第2ラウンド終了のゴングが鳴る。
完全に防戦一方だった。

「ああもう、これ見てらんないよ」
たかみなは今にも泣きそうだった。

コーナーで苦しそうに肩で息をする才加だが、容赦なく第3ラウンド開始のゴングは鳴る。
相手が一気に前に出てくる。
逃げる才加を逆に回り込むように立ち回り、スルスルとコーナーまで追い詰める。
この技術は相手が流石だった。上手い。
明らかに相手は試合を決めに来ている。
ガードの上から顔を狙って打っていたパンチが、今度はボディーに飛んだ。
相手の横を大きく回ったパンチが、才加の割れた腹筋に突き刺さる。
才加の体がくの字に折れるが、それでも耐える。
ガードを下げたら今度こそ頭部にパンチが当たることは分かっているのだろう。
サンドバックを打つ音とは違う、生々しい音が聞こえてくる。

うっうっ、と嗚咽が聞こえたので横を見ると、知らないうちにたかみなは泣きだしていた。
泣きながら、手で顔を覆い、中指と薬指の間から目を覗かせて、試合を見ていた。

そしてついに、相手のパンチがガードをすり抜けて、才加の顔に当たる。
頭が大きく後ろにぶれると、膝が折れた。

第3ラウンド半分あたりで、才加がダウンを取られた。

更新日:2011-11-08 19:57:37

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