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試合開始
あっという間にそのときはやってきた。
場内のアナウンスが入ると同時に颯爽と才加が登場する。
駆け足でリングサイドまで来ると、軽い足取りでリングに上がり、右拳を高く天井に向かって突き上げる。
グイッとロープを下げてリングインする姿は、どこか余裕があるように見えた。
しかしよく見ると、やはり表情は硬い。
余裕はあるように見えるだけで、実際は緊張しているようだった。
その様子を見ていると、こちらまで緊張が伝わってきた。
「うっひょー! 才加強そうー!」
隣ではしゃぐたかみなの言葉通り、才加の体は全身引き締まり、その割れた腹筋は輝いていた。
あの体なら、どんな相手が来ても、少なくとも女子には負けそうにない。
あんな体の女子は初めて見た。
続いて、対戦相手の選手が登場する。
才加の話によると、弱くは無い選手みたいだが、残念。
対戦相手が才加では勝てないだろう。
心の中で1人そう呟いていた。
しかし、対戦相手の姿を見て、その呟きは一気に自信がなくなった。
「え……あれ女子なの?」
たかみなのその言葉は決して相手を野次っているわけではないし、言い過ぎであるとも思わない。
私も同じようなことを思ったからだ。
誰だって抱くであろう純粋な疑問である。
髪は短髪で、そこらの男性より短い。
身長は才加とさほどの差は無いが、どちらかと言うと横に太く、その体格は才加より一回り大きく見える。
そして足のように太い腕。
才加のことをゴリラだとはやし立てる奴は、まずあの対戦相手を見るべきである。
当然のことながら、同じリング上でにらみ合う両者。
しかし、その体格差には違和感しか覚えない。
「才加超細えじゃん。いつもあの人と並んでたらいいよ」
「あっちゃん、それは言い過ぎだ」
そのまま試合は始まる。
カンッという誰もが聞いたことのある、これはイメージ通りの音が鳴った。
ガードを固め、のしのしとゆっくりとしたステップで近づいてくる相手に対し、才加は細かいステップを刻み、ジャブを出す。
両者の動きは対照的だ。
正直、初めは才加に勝ち目は無いのではないかとすら思ったが、そうでもない。
考えれば当然のことであるが、スピードでは才加が圧倒している。
才加はいくらでも相手に触れては逃げられるため、相手のパンチは空を切り続けている。
パワーはあっても、当たらなければどうということは無い、というわけだ。
ヒットアンドアウェイのアウトボクシングで、確実にパンチを当てていく。
私は素人ではあるが、才加の方が優勢であるように見えた。
「たかみな、これイケるんじゃない!?」
才加の予想以上の活躍に胸を躍らせ、たかみなの方を見ると、その瞬間にたかみなの表情が凍りついた。
慌ててリングに目を戻すと、どうやら相手選手のパンチが才加を捕らえたようだった。
すぐさまもう一度たかみなの方を向く。
「今どうなったの!? 当たったの!?」
「いや……ガードの上から軽く当たっただけだけど」
触れられたことにより、才加の足が止まる。
相手は一気に距離を詰める。
ガードの上からでもお構いなしに、見るからに重そうなパンチを奮う。
相手のパンチとの間にグローブがあってもダメージがあるのか、才加の動きは途端に鈍くなった。
スピードが殺されては才加の方が分が悪い。
相手ペースになったところで、1ラウンド目が終了した。
場内のアナウンスが入ると同時に颯爽と才加が登場する。
駆け足でリングサイドまで来ると、軽い足取りでリングに上がり、右拳を高く天井に向かって突き上げる。
グイッとロープを下げてリングインする姿は、どこか余裕があるように見えた。
しかしよく見ると、やはり表情は硬い。
余裕はあるように見えるだけで、実際は緊張しているようだった。
その様子を見ていると、こちらまで緊張が伝わってきた。
「うっひょー! 才加強そうー!」
隣ではしゃぐたかみなの言葉通り、才加の体は全身引き締まり、その割れた腹筋は輝いていた。
あの体なら、どんな相手が来ても、少なくとも女子には負けそうにない。
あんな体の女子は初めて見た。
続いて、対戦相手の選手が登場する。
才加の話によると、弱くは無い選手みたいだが、残念。
対戦相手が才加では勝てないだろう。
心の中で1人そう呟いていた。
しかし、対戦相手の姿を見て、その呟きは一気に自信がなくなった。
「え……あれ女子なの?」
たかみなのその言葉は決して相手を野次っているわけではないし、言い過ぎであるとも思わない。
私も同じようなことを思ったからだ。
誰だって抱くであろう純粋な疑問である。
髪は短髪で、そこらの男性より短い。
身長は才加とさほどの差は無いが、どちらかと言うと横に太く、その体格は才加より一回り大きく見える。
そして足のように太い腕。
才加のことをゴリラだとはやし立てる奴は、まずあの対戦相手を見るべきである。
当然のことながら、同じリング上でにらみ合う両者。
しかし、その体格差には違和感しか覚えない。
「才加超細えじゃん。いつもあの人と並んでたらいいよ」
「あっちゃん、それは言い過ぎだ」
そのまま試合は始まる。
カンッという誰もが聞いたことのある、これはイメージ通りの音が鳴った。
ガードを固め、のしのしとゆっくりとしたステップで近づいてくる相手に対し、才加は細かいステップを刻み、ジャブを出す。
両者の動きは対照的だ。
正直、初めは才加に勝ち目は無いのではないかとすら思ったが、そうでもない。
考えれば当然のことであるが、スピードでは才加が圧倒している。
才加はいくらでも相手に触れては逃げられるため、相手のパンチは空を切り続けている。
パワーはあっても、当たらなければどうということは無い、というわけだ。
ヒットアンドアウェイのアウトボクシングで、確実にパンチを当てていく。
私は素人ではあるが、才加の方が優勢であるように見えた。
「たかみな、これイケるんじゃない!?」
才加の予想以上の活躍に胸を躍らせ、たかみなの方を見ると、その瞬間にたかみなの表情が凍りついた。
慌ててリングに目を戻すと、どうやら相手選手のパンチが才加を捕らえたようだった。
すぐさまもう一度たかみなの方を向く。
「今どうなったの!? 当たったの!?」
「いや……ガードの上から軽く当たっただけだけど」
触れられたことにより、才加の足が止まる。
相手は一気に距離を詰める。
ガードの上からでもお構いなしに、見るからに重そうなパンチを奮う。
相手のパンチとの間にグローブがあってもダメージがあるのか、才加の動きは途端に鈍くなった。
スピードが殺されては才加の方が分が悪い。
相手ペースになったところで、1ラウンド目が終了した。
更新日:2011-11-08 19:57:20