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試合当日

その日の天気は良かった。
雲一つない、というわけではないが、空は見事な青色で、雲は程よい形に所々浮かんでいる。
まさに絵になる、いい天気であった。
駅から会場までの、川沿いの土手を3人並んで歩いていた。

「いよいよかー。緊張する?」
「そりゃするよ。もう心臓バクバクしてるわ」
「相手強いの?」
「まあ、私よりは格上だよね」

たかみなは、才加の緊張を少しでもほぐそうと、さっきから口が止まらない。
制服の私たちはいつも通りだが、上下ジャージの才加は少し新鮮だった。

「てか、何で私と一緒に来てんだよ。私が早く会場に入るのは当たり前だけど、あんた達は試合開始の時間に来ればいいんだよ?」

私達は朝から駅で才加と待ち合わせて、会場に向かっている。
彼女の言うとおり、私達は選手である才加と同じ時間に会場入りする必要は全くない。
このままだと試合開始の3時間前には会場に到着する。

「だって暇だし」
「道、分かんないし」

才加は何度もその必要性の無さを私達に説明してくれているが、この2言でここまで押し切っている。
実際それは事実であり、才加に朝からついていくことは、午前中から何もやることが無い時間と、駅からの道を調べる手間を無くしてくれている。
何もやることがないなら、駅からの道のりを調べる時間があるだろう、というツッコミはこの際無しだ。

「まあいいや。そこはあんた達の勝手だし」
「そうそう。他の人の試合でも観てるって」

才加は呆れた様子で首を振っていたが、その表情は笑顔だった。
たった1人の部活だ。
味方が少しでもいることが嬉しいのだろう。
友人として観戦に行くことが少しでも彼女の力になっているのなら、こちらとしても応援し甲斐がある。
どんな試合になるのか、それを想像すると、こちらも緊張で胸が高鳴った。

しかし、その数分後には、違う意味で緊張することになるとは思ってもいなかった。

更新日:2011-10-25 10:17:24

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