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中学時代

「え!? 才加1人なの?」
「ああ、そうだよ。女子ボクシングやる奴なんて他にいるわけないじゃん」
「昨日見に行ってびっくりしたもん」

またも3人で集まって昼ご飯を食べる。
私はさっそく昨日のことをたかみなと才加に話す。

「覗きに来てたなら声掛けてくれればよかったのに」
才加が頬を赤らめる。
気づかぬ間に自分の姿を見られているのは、誰だって恥ずかしいものだろう。

「いやーすごい集中してたから話しかけられなかった。邪魔しちゃ悪いと思って」
「そんなだった? 私どんな顔してた? 変な顔してたでしょ?」
「そんなことないよ。すっげーいい顔だった」
「それってどんな顔よ」

才加は眉毛をハの字にした。

「ウッホウッホホって感じか」

たかみなが口を挟んだ。

「誰がゴリラだ! このやろ!」
才加のヘッドロックががっちりたかみなの頭に入った。
「いててててて! ごめんって、冗談だって、ごめんって」

「てかさ、コーチも練習相手も無しって満足に練習できるの?」
ほどなくしてようやくヘッドロックから解放されたたかみなが息を切らしながら訊いた。
「一応週1でボクシングジム通ってるよ」
「週1? それでも足りなくない?」
「そうなんだよねー。うちはお金ないからさ、週1しか通えない分学校で自主練って感じ」
「そっかー。大変だよね」

自分を指導してくれる人物も、高め合う練習相手も満足にいない環境。
それでも才加がボクシングをやりたい理由はこのとき私には分からなかった。
ずっと昔からやっているスポーツなのだろうか。

帰り道、今日は才加も部活が無く、たかみなと私と才加3人で並んで歩いていた。

「中学は? 中学時代もボクシングやってたの?」
私は昼から思っていた疑問をただ素直に聞いてみた。
「中学? うーん……特になにもやってないよ。あ、バスケは少しやってたかなあ……」
「じゃあ高校からボクシング?」
「そうだよ」
「なんでボクシング?」
「別に……大した理由なんてないよ」

こうして結局、才加のボクシングを選んだ理由を聞けずに会話が終了したときだった。
そこは、このあいだ私とたかみなが絡まれた場所とほぼ同じような位置であった。
正面から歩いてくる1人の女が私達の方を見ながら口を開いた。

「よおー才加じゃないか。久しぶりだな」

更新日:2011-09-20 17:25:26

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