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負けず嫌い
駅を出て、家に向かう。
地元は住宅地であるため、寄り道するようなところは無い。
まあ、ゲーセンとかカラオケとかそういったプレイスポットがあったとしても私はわざわざ遊びに行ったりしないだろう。
駅から徒歩10分ほどで自宅に到着する。
自分の家は好きだ。
今のところ、両親とも仲はいいし、特に反抗期と呼べるような時期はなかった。
「家、嫌なんだよね」だとか「親うざい」なんて平気で言う人の気持ちは正直理解できない。
「ただいまー」
夕飯の準備をする母親に一声かけてから、自分の部屋へ向かう。
父親と、大学生である姉はまだ帰っていないようだった。
部屋に入り電気をつけると、かばんを床へ投げ捨てる。
ドスン、とそのかばんが床に着地すると同時に、バタン、と私はベットに飛び込む。
「疲れたー」
誰も聞いちゃいないのに、つい声を出してしまう。
高校へ通い始めてすでに1か月が経過しているが、まだ慣れない。
朝は満員の電車で揉まれ、授業は中学よりもずっと難しい。
毎日増え続ける膨大な宿題、そして次の授業のための予習。
「これで部活もやるとか、考えられないわ」
私はまた誰も聞いていないのに1人で呟いていた。
ベットに寝転んでいると疲れがどっと溢れてきた。
瞼が重くなってくる。
眠たい。でも宿題と予習をやらなければ。
いや、もうすぐ夕飯ができる。
しかし、ご飯を食べたらもっと眠気が強くなるかもしれない。
そんなくだらないことをグダグダと考える。
しかし、気づけば考えていたことは電車の中で考えていたことと変わらなかった。
私は良くも悪くも負けず嫌いな性格だと自分で思う。
お前には無理だ、とか言われると異様に反発したくなる。
相手には悪気は無いにせよ、自分の底を見られているような気がして頭に来るのだ。
何年も前だからあまり覚えていないが、小学校低学年くらいの時だったろうか。
学校近くの公園にブランコがあった。
結構大きくて、高さもあるから子供の私たちには大人気だった。
その公園に通うのが日課になっていた気がする。
しかしある日、上級生がずっとそのブランコでたむろしていた。
もちろん低学年の私たちは怖くて近づけない。
「遊べなくなっちゃったね」
友達が悲しそうにうつむいていたのをわずかに覚えている。
「順番だよってビシッと言えばどいてくれるんじゃない?」
このとき私は本気でこの提案をしていた。
上級生でも同じ小学生だし、文句を言ってやるのが普通だと思っていた。
「何言ってんのー。無理だよ。怖いし」
「大丈夫だって。いけるって」
「無理無理。絶対無理。敦子だって怖いっしょ? 無理でしょ?」
そう、この発言。
私は怖くないし、無理とも思わない。
その言葉に触発された私は正面から上級生に立ち向かったのを覚えている。
結局、普通に言えばあっさり譲ってもらえた。
相手にとってはまだ言葉もおぼつかない小学生低学年が騒いでるのが面倒だったのだろう。
私たちは相手にもされていなかったに違いない。
今思えば何とも小学生らしい笑える可愛い話ではないか。
中学生のときもその性格は変わらなかった。
「あの先生のテストは絶対満点獲るのは無理だ」と言われていた英語のテストがあった。
勉強すれば満点獲れないテストは無いだろう、と考えていた私にとっては十分な着火剤だった。
他の科目を捨てて死ぬほど勉強した。
しかし結果は確か、満点は獲れなかった気がする。
でもそのとき英語を死ぬほど勉強したからこの学校の偏差値に届いたと言ってもいい。
英語は今でも得意科目だ。
負けず嫌いだとは思うが、挑発されたら何でもやるわけではない。
自分にできないと思うことはやらない。
私に火がつくのは自分ができると思うことを頭ごなしに無理だと決めつけられた時だ。
そして今、私のその性格が顔を出している。
ともちんに言われた言葉。
―あっちゃんだってさ、いきなり茶髪とメイクする、なんて無理でしょ?
帰り道の電車でもずっと頭に残っていた。
「うーん……よし決めた。たかみなに連絡しとこ」
そうしてたかみなにメールを送ったところで、母親から大きな声で夕飯の食卓に呼ばれた。
地元は住宅地であるため、寄り道するようなところは無い。
まあ、ゲーセンとかカラオケとかそういったプレイスポットがあったとしても私はわざわざ遊びに行ったりしないだろう。
駅から徒歩10分ほどで自宅に到着する。
自分の家は好きだ。
今のところ、両親とも仲はいいし、特に反抗期と呼べるような時期はなかった。
「家、嫌なんだよね」だとか「親うざい」なんて平気で言う人の気持ちは正直理解できない。
「ただいまー」
夕飯の準備をする母親に一声かけてから、自分の部屋へ向かう。
父親と、大学生である姉はまだ帰っていないようだった。
部屋に入り電気をつけると、かばんを床へ投げ捨てる。
ドスン、とそのかばんが床に着地すると同時に、バタン、と私はベットに飛び込む。
「疲れたー」
誰も聞いちゃいないのに、つい声を出してしまう。
高校へ通い始めてすでに1か月が経過しているが、まだ慣れない。
朝は満員の電車で揉まれ、授業は中学よりもずっと難しい。
毎日増え続ける膨大な宿題、そして次の授業のための予習。
「これで部活もやるとか、考えられないわ」
私はまた誰も聞いていないのに1人で呟いていた。
ベットに寝転んでいると疲れがどっと溢れてきた。
瞼が重くなってくる。
眠たい。でも宿題と予習をやらなければ。
いや、もうすぐ夕飯ができる。
しかし、ご飯を食べたらもっと眠気が強くなるかもしれない。
そんなくだらないことをグダグダと考える。
しかし、気づけば考えていたことは電車の中で考えていたことと変わらなかった。
私は良くも悪くも負けず嫌いな性格だと自分で思う。
お前には無理だ、とか言われると異様に反発したくなる。
相手には悪気は無いにせよ、自分の底を見られているような気がして頭に来るのだ。
何年も前だからあまり覚えていないが、小学校低学年くらいの時だったろうか。
学校近くの公園にブランコがあった。
結構大きくて、高さもあるから子供の私たちには大人気だった。
その公園に通うのが日課になっていた気がする。
しかしある日、上級生がずっとそのブランコでたむろしていた。
もちろん低学年の私たちは怖くて近づけない。
「遊べなくなっちゃったね」
友達が悲しそうにうつむいていたのをわずかに覚えている。
「順番だよってビシッと言えばどいてくれるんじゃない?」
このとき私は本気でこの提案をしていた。
上級生でも同じ小学生だし、文句を言ってやるのが普通だと思っていた。
「何言ってんのー。無理だよ。怖いし」
「大丈夫だって。いけるって」
「無理無理。絶対無理。敦子だって怖いっしょ? 無理でしょ?」
そう、この発言。
私は怖くないし、無理とも思わない。
その言葉に触発された私は正面から上級生に立ち向かったのを覚えている。
結局、普通に言えばあっさり譲ってもらえた。
相手にとってはまだ言葉もおぼつかない小学生低学年が騒いでるのが面倒だったのだろう。
私たちは相手にもされていなかったに違いない。
今思えば何とも小学生らしい笑える可愛い話ではないか。
中学生のときもその性格は変わらなかった。
「あの先生のテストは絶対満点獲るのは無理だ」と言われていた英語のテストがあった。
勉強すれば満点獲れないテストは無いだろう、と考えていた私にとっては十分な着火剤だった。
他の科目を捨てて死ぬほど勉強した。
しかし結果は確か、満点は獲れなかった気がする。
でもそのとき英語を死ぬほど勉強したからこの学校の偏差値に届いたと言ってもいい。
英語は今でも得意科目だ。
負けず嫌いだとは思うが、挑発されたら何でもやるわけではない。
自分にできないと思うことはやらない。
私に火がつくのは自分ができると思うことを頭ごなしに無理だと決めつけられた時だ。
そして今、私のその性格が顔を出している。
ともちんに言われた言葉。
―あっちゃんだってさ、いきなり茶髪とメイクする、なんて無理でしょ?
帰り道の電車でもずっと頭に残っていた。
「うーん……よし決めた。たかみなに連絡しとこ」
そうしてたかみなにメールを送ったところで、母親から大きな声で夕飯の食卓に呼ばれた。
更新日:2011-07-13 00:36:17