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小説

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 村の中は小さな家々が犇く様に建てられていて、一度逃げこめばそう簡単には見つかりそうにない。
 少年は、一つの小さな家の入り口を無視し、裏側に回り込む。
 そこには、同じく貧しい姿の小さな幼女が待っていた。

「悪いな、おいら達には家がねえんだ」
 少年は申し訳無さそうに謝る、妹の頭を優しく撫でた。
「ちゃんといい子に待っていたか?」
「うん!」
 幼女は嬉しそうに答える、そしてその手に持っている蜜柑に目を丸くした。

「蜜柑!蜜柑」
 滅多に食べられるものでないのだろう、食事自体満足に出来ている様子ではない。
 手を伸ばす妹の手を、少年は必死ではらった。

「悪いな、これは、このお兄ちゃんのものなんだ、お前には後で何か食べさせてやるから・・・」
 そう言う少年の方も辛そうだ。
 そんな二人のやり取りを、帝辛は眉一つ動かさず冷静に眺めていた。

「そんなものは要らぬ」
 帝辛は冠を外した。乱暴に地面に転がす。
 続いて、上衣を脱ぎ始めた。

「こんな場所で、このような衣を着ていては、満足に視察もできぬ」
 目を丸くして見つめている少年に、帝鴻はたしなめるように言った。

「察しの悪い奴だな、お前の着替えをよこせ・・・代わりにこれは全部くれてやる」
理解した少年は唖然とした。

「それはさすがに悪いって・・・おいらのオンボロと交換なんて」
「それでいい、窮屈で仕方がなかったんだ・・・それよりも」

 帝辛は少年を見据えた。その視線に少年は一瞬、たじろぐ。
 狼のように鋭い、銀の瞳だった。同じ子供なのに近寄りがたい威圧感を感じる。

「村を案内しろ、それが我の目的なのだから」
 少年は、それに従わざるを得なかった。

更新日:2011-04-18 00:18:03