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 帝辛の父である、今の商の王は、人並みの人物だが、帝辛は幼い頃より雄弁で頭脳明晰、まわりの期待が厚い子供だ。

 もちろん、帝鴻もその一人なのだろう。
 国王の命の下、常に帝辛に付き、教育や身の回りの世話をすべて一人で担っていた。

「ならば、それはお前のお陰だろう」
 帝辛は淡々と言葉を続けた。

「お前を見ていると、周りがすべて愚か者に見える」
 帝鴻がいつから、この国の家臣なのか、帝辛にはわからない、しかし、気づいたときにはすでに、彼無しでは国を動かせず、王ですら彼のいう事には逆らえない。
 そんな立場に身を置いているのも関わらず、帝鴻は横暴な振る舞いもせず、涼しい顔で政を進めるのだ。
 回りは気づいていないかもしれない、反感も買わない。
・・・しかし、すべては彼が望むように進んでいる。

「貴方は、本当に将来が楽しみな御方だ」
 帝鴻は帝辛の言葉を察したように、含んだ微笑を浮かべている
 すべて、お見通しなのだろう。

「折角なので、馬も休ませましょう、このような貧しい村では窮屈でしょうが、どうか、しばらく我慢してください」

 帝鴻はそういうと、護衛の兵士達に指示を出しにいった。彼が帝辛から目を離す事は珍しい。
時間もそんなに無かったのだが、そんな時に帝辛に話しかけるものが居た。

更新日:2011-04-18 00:14:58

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