• 25 / 27 ページ
「私を牢屋から出してくれたわ」
そういうと煌凛は笑った。

「いつか、大人になったとき、貴方は国を治める王様になるんだと思う
・・・それを避けられることは出来ないわ」
自分が有蘇を支えていくように・・・という言葉を匂わせているのが解る。

「国という大きな物を背負っている事は不自由かもしれない、だけど、それに今から縛られる必要はないでしょ?」
煌凛は切実そうに言う。

・・・何故、この娘はこれほど自分に深く接してくれるのだろう。

帝辛は不思議でならなかった。恐れず対等であろうとする人物に初めて出会った。
「・・・お前は」
何も考えず、自然に言葉が浮かんだ。

「もし、我が悩み苦しんだ時に、お前は我に協力できるか?」
もちろん、力ではない、
「誰も信じられず、どうすることも出来なくなっても・・・お前だけは味方で居てくれるか?」
はじめこそ、目を見開いた煌凛だが、次第に目頭に涙を溜めて、大きく微笑む。

「私の支えなんて、本当にささやかなものだけど・・・だけど力になるわ」
涙を拭きながら煌凛は言う。

帝辛は嬉しかったが、そのように笑えない・・・笑い方を知らないのだ。
ささやかなものだと煌凛は言うが、その存在の価値を彼女自身が解っていないと帝辛は思う。

人を立場や上辺で判断せず、正面から知ろうとする。
・・・自分の足りない部分を、切実に手に入れたい部分を持っている彼女がとても頼もしかった。

「信じていいか?」
「うん」
その後は穏やかな気持ちで、眠りに落ちて行った。

更新日:2011-04-23 15:43:10

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook