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「ありがとう」
双樹は、そう言うと、その嫦娥の手を自分の頬に当てた。
この手を失いたくない
・・・自分には理解できない、思いだって片思いだ・・・だけど目を背けてはいけない
本当に大事な人だから

「そういえば・・・居間は」
恐る恐る聞く、
「ああ・・・粗方、片付けた」
嫦娥は答える。
そう言えば、外が暗い、朝起きた出来事だったから、かれこれ半日以上眠ってしまっていたのか。

「・・・台所まで荒らされていて、全く」
腹立たしそうに嫦娥は言った

・・・それは僕が食器棚を倒したからなんだけど・・・
言いたかったが、手伝えなかったのに引け目を感じ、言えなかった。

「ねえ、嫦娥」
「ん?」
「しばらく二人きりだね」
「ああ、そうだな・・・」
嫦娥はそっぽを向く、双樹は仰向けのまま嫦娥に笑いかけた。

「昔は二人で、食べられる草を探して過ごしたりしてたよね・・・懐かしいな」
「・・・・何を、急に」
嫦娥は不機嫌そうに呟いた。

「まさか、やろうっていうんじゃないだろうな、嫌だぞ俺は」
「・・・いやなら、僕一人でやるよ・・・それよりも」

懐かしそうに双樹は目を細めた。
「あの桜は今も元気かな・・・最初に嫦娥に会ったあの桜」
「・・・・ああ、」
嫦娥はふと意外そうに言った。

「そう言えば、お前が俺に最初に会ったのはあの場所なのか」
「え?嫦娥は違うの?」
双樹は意外そうに言う、思わず嫦娥は頬を赤くして、どうでもいいだろ!?と続きを話さなかった。

「・・・明日行ってみよう、天気が良かったら」
嫦娥は返事をしないが、断られないからきっと行ってもらえるのだろう。
一番、理解をしてくれている、最も大事な人だ。いつまでも、こんな風に過ごして行きたい。
双樹は安心して眠りに落ちた。

更新日:2011-04-10 05:09:56

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