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「剣か・・・」
翡翠を剣の形に切り出した、実用性の無い剣だった。
しかし、大変見事で美しい。
装飾の施された薄緑の剣に、柄を巻いている朱の色がとても鮮やかだ。

普段、そういうものを、ほとんど表情にださない嫦娥(じょうが)ですら、興奮した様子で柄を握り、さまざまな角度から観察していた。

「商との戦で敗れた小国にあったものなのじゃが・・・」
その剣を渡した雪鳳(せつほう)が説明する。
「奉納されていた神社が焼き払われてのう・・・月神を祭っていた場所ゆえ」
もう解ったじゃろう・・・とばかりにため息をつく

「つまり、俺が貰っていいってことだよな?」
「月神に直接渡すと言うのも、なんだか滑稽な話だがな」

思いがけない物を手に入れたことと、久々の清清しい朝の空気に幾分、気持ちが和らいでいるのを感じる
最近、嫌な事があり、ずっと不機嫌だったのだ。
・・・原因は・・・

「おはようございます先生」
双樹が、いつものように雪鳳に挨拶をする。

「ああ・・・双樹」
雪鳳が心配そうに話しかけた。
「具合の方はもう良いのか?」
何があっても、まわりに心配をかけさせまいと気丈に振舞う性格を雪鳳は良く知っている。
双樹は表情を曇らせながらも明るく答えた。

更新日:2011-04-03 02:26:40

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