序章
―これが、本当に私が暮らしていた街だろうか―
タイヤ、冷蔵庫、掃除機、テーブル、椅子、エビフライの入ったトレイ……
油臭いドロ沼のような道に散乱する、さまざまな物を避けながら歩く。
国道で、壊れて折り重なったまま放置された車を何台も見かけた。
新しいマンションが、ビルが、民家が、信号機が。
半壊したり傾いたりしている。
どうして、こんなことになっちゃったんだろう。
私は現実を受け止められないまま、道路一面に広がった泥の中を、滑らないように気をつけながら歩き続けた。
更新日:2011-04-07 13:36:08