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レシピ

 シュレの住んでいる辺りは、俗に旧市街スタンブルStanbulと呼ばれている
世界遺産であるIstanbul歴史地区に近く、大型から長期滞在型までホテルがたくさんある
観光客と、Istanbul大学が近くに在るため、学生も多い
レストランや地元向けの商店街もあり、活気のある街だ
Tram、Metro、路線バスと、少し歩くが鉄道も利用できる
さらにTaksim広場へ通じる大通りの、すぐ傍にあった
 Boģazici海峡からMarmara Denizi(海)へ回ると、外国人観光客にはあまり知られていない素朴な、静かな町になる
この辺りは元々小さな漁村で、海沿いにはByzantian帝国時代の城壁が遺っている
 シュレは広場の露店で、いいカルカン・バルーヴ(イボカレイ)が入ったと顔見知りの魚屋の親父に声をかけられた
カルカンは、身が柔らかく美味で高級魚とされる 1尾は結構でかいが、カレイの常で骨が多い 揚げたり蒸し焼きにする シュレはカルカンとムール貝を買う
 別の露店で新鮮なセミズオトゥ(スベリヒユ=ポーチュラカの葉らしい)、トマトなどの野菜と、果物も買った
 郊外列車の高架をくぐりリズミカルな歩調で、石畳の少し急な坂を登る
隙間なく建てられた4、5階建ての古い住居が続く
窓から洗濯物や、つる系の植物が垂れ下がる
マロニエや鈴掛の街路樹、片側に路駐の車列 子供が数人、遊びながら駆け抜けて行く
シュレも相棒の赤毛Redも、こんな下町で育った
 シュレのアパルトマンは、半地下に屋根裏付きの地上3階建 少し古いが窓の作りに趣がある
1階に広いガレージがあり、地下階は銃などの保管庫を兼ねたメンテナンス作業部屋、屋根裏は物干しと倉庫、3階は半分トレーニング用に使っていた
他に借り手が居ないと言うことで、2階のワンフロアを居住用に改築している
 もうずい分夏らしくなり、夕方近くなっても気温が下がらない
隣家の大家さんとの間に在る、庭に面した窓を開ける
鈴掛の木立を通って来た涼しい風が入った

 中庭に面した2階のテラスへ、テーブルセッティングする
黒鉄と真鍮でできた枠と脚を持つガラステーブル
雰囲気が気に入っているのだが、ガラスの天板に直接ガラスや陶器の食器を置くのは好きではない なので、象牙色にところどころダイヤ柄の地模様のクロスをかける
 その昔母親が象牙色のテーブルクロスは黄ばんでいるようで嫌だと言っていたが、逆にシュレは真っ白なクロスやシーツは病院ぽくてちょっと、と思っていた
もしかすると、父親と最後に対面した病院でのシーンとオーヴァラップするから嫌なのかもしれない
 オーヴァシャツを脱いでタンクトップ姿になる 靴も脱いでしまう
素足にテラコッタタイルの感触が好きだ
そうしてキッチンカウンターに立つ
 CDや古い映画のDVDを流しながら作ることも多いが、今日はBGM無しで作りたい気分だ
いつもそうだが、ひたすら料理していると、ほとんど耳に入ってこない 何か考え事をしていてもすぐに、無心になると言うか‥‥たいがい何も考えなくなる
だが今は
ふと気付くと無意識に、白金の長い髪、白い花のような美しい姿を思い描いている

 シュレは器用にカルカンの皮と骨を除く
薄切りにしたカルカンの身をバットに重なり合わないよう並べ、軽く塩コショウしオリーブオイルとレモン汁をかける
粒マスタード、オリーブオイル、岩塩を削り混ぜ合わせたマスタードソースを作る
切り身とソースをバットで和え冷やす
涼しげなガラスの皿に冷えた切り身を盛り付け、下ろしたカラスミ、イクラを散らした
テラコッタの鉢に寄せ植えしているハーブの中から、バジルをちぎって添える
カルカンをカルパッチョ風に仕上げた
バットに氷を入れ皿を上に置き、冷やしておく
 淡い薄緑色のセミズオトゥは簡単にちぎり、湯むきしたトマトとキュウリのざく切り、青唐辛子、みじんに切ったパセリ、ミントを加え、少しピリ辛なさわやかな口当たりのサラダ(和えもの)ボスタナBostanaにした
 ムール貝はたっぷり目の白ワインで蒸し、貝から身を外しておく
別鍋で玉ねぎのみじん切り、赤唐辛子を入れスープを作る ムール貝を蒸した白ワインはスープのいい出汁になる
オリーブオイルでみじん切りにしたニンニクを炒め、白米を炒め白ワインを加え、熱い貝のスープをひたひたより多めに注ぐ
中火でコトコトとアルデンテに煮込む 塩コショウで味を調えムール貝のむき身を混ぜる
 リゾットを煮込んでいる間に、カルカンの切り身に小麦粉をはたき、溶き卵をくぐらせフライパンでソテー ピカタを作る
ソテーしながら残った溶き卵を絡めるように焼きつけるのがコツだ
 上面に墨汁を流し込んだような黒い模様の、アーティスティックな白い皿
それにムール貝のリゾットを盛る セルクルを置いて薄く丸くしつらえた

更新日:2011-04-23 14:38:17

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