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チャライ男と痛い女のこと

私が中学校にあがる頃、反抗期だったせいもあり、
いつしか帝と疎遠になっていた。
もちろん何度か帝を見かけたことがあったが、
声をかけることはなかった。

まあ、帝が女の人と一緒にいる時ばかりだったので
声をかけづらさはあったし
自分のことでいっぱいいっぱいだった時期でもあったので
そのことを気にもしていなかった。
ただ、毎回違う女を連れていたので
「あ〜。ハーフってモテるんだな」と思ったぐらいだ。


帝の容姿に変化が見られるようになったのはちょうどその頃だった。
前は、大人しいオタクっぽい装いを好んでいたのだが、
まったく真逆なルックスに最初は帝だと認識することができなかった。


黒いTシャツにごついシルバーの指輪や腕時計をしていた。
髪は黒髪のままだだが、昔よりも毛先が
くるんとなって猫っ毛が増していた。
パーマなのか、体質変化なのかは定かではないが
人懐っこいキャラクターに変身していた。

唯一、細いラインの黒い縁なしのメガネが
優等生だった頃の帝を思わせた。


思春期特有の『男の人きらいきらい症候群』だった私は、
そんな帝を「チャライ男」と鼻で笑っていた。



私はというと、同じハーフなのだが反骨精神の芽が出たばかりで
可愛く着飾ることよりも反抗することに知恵を使っていた。

大流行したミニスカート丈に対抗してロング丈にしたり
ルーズソックスに対抗して短いソックスを履くといった
今考えると『痛い女』真っ盛りだった。
案の定、モテのモの字もないまま私は高校生になった。


暑っ苦しい通学用ヘルメットからの解放は
私をちょっと女へと押し上げたかに見えた。
しかし、『痛い女』はそうそう簡単には変われない。
周りの女子がどんどん女性らしくなっていくのに対し
私は男っぷりに磨きをかけていった。

体育の選択授業もキャーキャーとソフトボールバレーを打ち当ている女子を尻目に
男臭い柔道着を着て、不器用ながらも背負い投げをマスターしたり、
超マイナーな科学部にはいり、メガネデビューを果たしていた。
自分でも学校ではイケてる部類には属していないことを理解していたし
むしろ、それを誇りに思っていた。

そんな充実した日々が続いていたが、最初の異変に気がついたのは
高校生になった最初のGWだった。

更新日:2011-03-28 22:27:35

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