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人形

「ラム・・・どこだ?」

珠魔の手を逃れたあたるは捕らわれたラムを探すため校舎を走り回っていた。
水晶玉から見えた光景はどこかはわからないが
この友引高校の校内であることは間違いなかった。
ラムに命の危険が迫っている。
いつもはガールハントに現を抜かし、ラムの方には目もくれないあたるだったが、
この時ばかりはラムのことで頭がいっぱいだった。
いつもならモーションをかける可愛い女の子とすれ違ってもあたるは手を出さなかった。
その時、前方からしのぶと竜之介が歩いてきた。

「あたる君、そんなに慌ててどうしたの?」
「しのぶ!竜ちゃん!ラムを見かけなかったか!?」
「え?ラム・・・さあ、授業が終わってからは見かけなかったけど・・・
何かあったの?」
「い、いや、何でもない・・・それじゃ。」
「何だ、あいつ?」

あたるは二人を置いてそのまま走り去っていった。
今度ばかりは本当に死ぬかもしれない。
だからこの二人を巻き込みたくなかったのだ。
しのぶと竜之介は怪訝に思いながらも去っていくあたるを見送った。

「あ、ダーリン!」
「ランちゃん」

可愛らしい笑顔でやってきたのはラムの幼馴染のランだった。
宇宙人の彼女ならラムの居所がわかるかも・・・
あたるの中にそんな淡い期待があった。
だが、その期待には残念ながら応えてくれなかった。

「ねえ、ラムちゃんを見かけなかった?」
「え・・・いや、俺も探してるんだ。それじゃ。」
「何じゃい!あの態度は・・・いつものあたるやないやんけ・・・
何かあったんか・・・?」

あたるは再び走り去っていった。
あたるが飛び出して30分ほどが経っている。
この広い校舎のどこに監禁されているかなんて想像もつかない。
あたるの顔に焦りの色が見える。
その時、面堂終太郎が物凄い形相で向かってきた。
その手には刀が握られて今まさに斬りかからんとしていた。

「諸星ぃ~!!」
「はっと!!」

振り下ろされる刀をあたるは見事な真剣白羽取りで受けとめた。

「貴様・・・ラムさんがいなくなったと言うのは本当か!?」
「おのれはいちいち刀を抜かんと会話できんのか!?」

すっと刀を納める終太郎は務めて冷静になって言った。

「ラムさんが監禁されたというのは本当か?」
「お前、何でそんなこと知ってるんだ?」
「面堂家の情報網をなめるなよ。」
「なら、ラムの居場所もわかるんじゃないのか!?」

終太郎は眼をつぶって申し訳なさそうな顔をする。

「すまないが、僕自身が屋上の方へ行くのを見たのが最後で
それ以来消息は面堂家の情報網を持ってしてもつかめない。」
「屋上・・・?何しにいったんだ・・・あいつ・・・まさか!?」
「そのまさかよ。」
「何!?」

言い合う二人の後ろから幼い少女の声がしてあたると終太郎が振り返る。
するとそこにはレオタード姿の珠魔が微笑みを浮かべて立っていた。

更新日:2011-03-28 23:36:17

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ラムとあたると小さな天使  (二次創作・うる星)