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「・・・あっ」
双樹が本を開こうと下に目をやると、枝分かれした一つからリスが走ってきた。
ここに居る動物と双樹は友達だ

「ちょっと、待っててね」
腰から袋を出し、中の木の実を、リスに食べさせる。
それにつられて、さらに数匹の動物が顔を出した。

「・・・こんなに持ってきたかな」
不安そうに腰に手を伸ばした双樹が身をよじっていると、一匹のリスが勢い良く肩に飛び乗った。

「あっ!」
バランスを崩した双樹は幹から落ちる
斜めの緩やかな幹とは言え、距離があるので結構な高さだ。

・・・思わず手が伸びてしまった。
転落した双樹を下で抱きかかえる

「・・・え?」
身を硬くしていた双樹が目を開いて驚いた。
嫦娥と目が合う

「お兄さん、誰・・・」
「なっ!?」
・・・見せてないはずなのに!?
動揺し、思わず腕を放す

ゴン!

鈍い音を立てて、双樹は落ちた。

・・・見られた!?
まれにそういう人間は居るのだが、今まで双樹が全く自分に気づいていなかったので油断していた。
・・・いや、よく考えたら、抱きかかえようとした時点で、無意識に姿を見せていたのかもしれない

双樹は全く、起き上がる気配が無い
そういえば、何か鈍い音がしたような・・・

「・・・!!」
目を落とすと、双樹は白目をむいて気を失っている
血の気は失せ、口から泡をふいていた。

すぐ傍に、切り株がある
・・・どうやら、これに頭をぶつけたようだった。

人間になど関わりたくない
嫦娥は起き上がるまで待とうと思った。しばらく時間が経過する
・・・しかし、一向に、起きる気配は無い

「・・・・・・」
このままにするには、気が咎められる
自分が起したら、正体がばれてしまうし、どうしたらいいだろう?
「ああ・・・まったく、鈍臭い!」

更新日:2011-03-19 17:05:11

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