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小説

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「いえ・・・」
双樹は照れて赤くなる
「身寄りの無い僕をこうして置いてくれているんだもの、これぐらいやらなくちゃ」
おずおずと、持っていた本を出した。

「あの、先生・・・午後から、勉強を・・・」
「ああ・・・それなのだが・・・」
雪鳳の表情が曇った。
「欄陵(らんりょう)姫の具合が悪くなってのう、看病して差し上げなければならぬ」

「あ・・・」
一瞬、目を見開いた双樹だが、慌てて笑顔を作る
「いえ、僕はいいんです、いつでもいいから・・・」
「すまぬ」
そういうと、雪鳳は背中をむけ、足早に欄陵の元へ向かった。
双樹がその姿を心配そうに見送る。

「また、いつもの鬱病か・・・」
「嫦娥さん!」
古鏡が厳しい目で睨みつけた。古鏡は欄陵の使役する神なので、欄陵の事は絶対だ。

「間違えでは無いだろう?心の病だ」
そんな様子に気を止めず、嫦娥は続ける
「あの姫が人よりも特別なのはわかる、しかし、お前も雪鳳もあまりに過保護だ」

欄陵姫は人の胸のうちにある本音を読み取る力があった。
それゆえに兄に虐げられ、人に心を開かない
克服しようとする努力は見られるが、小さな事でも深く傷つくため、雪鳳も古鏡も気が気じゃない。

「貴方だって、双樹さんに過保護です」
踵を返すように古鏡はいう、話が一周してしまった。
「だから、俺はあいつの事なんてどうとも思ってない、イライラするだけだ」
「ふーん」
「何だよ?」
古鏡は一呼吸置くと呟いた

「・・・ツンデレ」
「何だと!?」
古鏡は机にあった本を開くと、邪魔だから退いてくれます?とばかりに嫦娥を目であしらった。

「そんなにあの子の事が気になるのなら、姿をみせてやればいいじゃないですか」
本に目を落としながら、古鏡は言った。

「お前じゃあるまいし、何故、わざわざ人間と関わらなければならないんだ」
特定の場所を持たず、現れたり、消えたり・・・
本来、神と言うものはそういうものだ
実際、嫦娥はそういう拘束されない生活に馴染んでいて、あえて姿を見せようとしたことなど一度もない。

「案外、良いものですよ」
古鏡はにんまりと笑う。
「双樹さんも、きっと喜ぶと思うのに」

更新日:2011-03-19 17:27:10