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大体普段俺をあれだけ酷いエロテロリスト扱いしておいて、何で急にこんなに無防備な事するんだよ、信じられない。
……と、クリスと意見が被っていた事など知るはずもなく、一人思う。
ついこの間キスくらいでギャーギャー喚いて俺を引っ叩いていたというのに、それでもまだ男と二人きりになるという事に危機感を持つ事が出来ないのか、この娘っ子は。
いや、そりゃまぁ手を出していい相手と悪い相手、どこまでやっていい悪い、くらいは俺も弁えているつもりだ。
きっとそんな紳士な俺を信じての態度なのだろう……
だからと言って、別にそういう感情が芽生えないわけではなく、単にこの俺の素晴らしい理性が頑張ってくださっているからこそのモノであり……
つまりアレ、一晩生殺しとか本当に勘弁して頂きたいのである。
クリスにおっさん扱いされているけれど、俺は一応まだ若いつもり。アイツからしてみれば二十歳越えたら全部おっさんに見えるだけで、俺まだ一般的にはお兄さん。
しかもここしばらくは禁欲生活中。今この状況で目の前に美味しそうなおっぱいが転がっていたら、理性さんはオーバーヒートしてしまうではないか!!
外からは笛とリュートの音色が聞こえており、レクチェはそれに静かに耳を傾けていたが、俺の視線に気が付くとにっこりと笑って言った。
「お風呂入ったらどうです?」
この状況で俺に風呂をすすめるとは何事か。
普通の男女の流れならもうソレはむしろ早く入ってきてよベッドで待ってる☆みたいなもんだろうが!! そんなの微塵も考えていないのを知っているので、そこは妄想に留めておくけども!!
俺は自分を取り戻そうと、わざと叩かれるような事を言ってみる。
「レクチェももう一回入ろうよ、俺と一緒にー」
言うなり顔に飛んでくるのは枕。
「入るわけないですから!」
ぼすり、と俺のベッドにレクチェの枕が落ちる。枕が当たってじんじんする顔をさすりながら俺は思った。
あぁそうそう、こういうノリになってくれないと落ち着かないんだ。嫌がられているくらいが丁度いい。
一瞬だけ、城に居た頃の事を思い出す。見初められようと必死に擦り寄ってくる者、嫌々ながらも命令に従いその肌を晒す者、どちらにしても気分の良いものではなかった。
傍から見るとマゾっ気でもあるように見えるかも知れないが、素直に怒って貰える事がとても素晴らしい事だと、俺は城の外に出て思う。
怒りだけは、他の感情に比べて偽りである可能性が限りなく低いから、嫌いじゃない。
「仕方ないなぁ、一人で入ってくるから服脱いで待ってろよ」
「もー! そんな事ばっかり言って!!」
レクチェの怒声を笑って聞き流しながら、俺は部屋の浴室へそそくさと歩いて行った。
脱衣所でライトから貰った服を丁寧に脱ぎ畳みながら、あぁせめてもう一着服が無いと不便だな、と思いつつ明日買う予定を脳内で立てる。
浴室は流石に寒いが、湯をうまく適温にして頭から被った。
さっき昔の事を思い出してしまったせいか、ぼーっと湯を浴びながら、俺はローズの事を考える。
最初はその美貌に目を奪われた。触れれば砕けてしまいそうな繊細な容姿に、真っ白な羽根を背に広げ、月も無い夜に輝く。しかし美しいだけではない、彼女の瞳には強さがあった。
言うなればまるで君臨する者。全てを踏み躙ってでも一人屍の上に立ち、何かを掴み取る覚悟。
それは城の女には無いものだった。強く美しい女、というならばレイアもそうだと思うが、種類が全く違う強さだと思う。
実際、探し当てて傍に居させて貰う事を願った時、ローズは別に俺を好いて近くに居る事を許したわけじゃない。女王が忠実な手駒を手に入れた、そんなようなものだ。
我ながら女の趣味が悪いに違いないだろう。いつまでも手に入る事は無いのだから、いつまでも追い続け、その虜になったまま今も縛られ続けている。
「でも今の追い方は嫌だよなぁ……」
中身が違うのならば追っていても少しも面白くない。俺は俺の為に、彼女を元に戻す。それだけだ。
……と、クリスと意見が被っていた事など知るはずもなく、一人思う。
ついこの間キスくらいでギャーギャー喚いて俺を引っ叩いていたというのに、それでもまだ男と二人きりになるという事に危機感を持つ事が出来ないのか、この娘っ子は。
いや、そりゃまぁ手を出していい相手と悪い相手、どこまでやっていい悪い、くらいは俺も弁えているつもりだ。
きっとそんな紳士な俺を信じての態度なのだろう……
だからと言って、別にそういう感情が芽生えないわけではなく、単にこの俺の素晴らしい理性が頑張ってくださっているからこそのモノであり……
つまりアレ、一晩生殺しとか本当に勘弁して頂きたいのである。
クリスにおっさん扱いされているけれど、俺は一応まだ若いつもり。アイツからしてみれば二十歳越えたら全部おっさんに見えるだけで、俺まだ一般的にはお兄さん。
しかもここしばらくは禁欲生活中。今この状況で目の前に美味しそうなおっぱいが転がっていたら、理性さんはオーバーヒートしてしまうではないか!!
外からは笛とリュートの音色が聞こえており、レクチェはそれに静かに耳を傾けていたが、俺の視線に気が付くとにっこりと笑って言った。
「お風呂入ったらどうです?」
この状況で俺に風呂をすすめるとは何事か。
普通の男女の流れならもうソレはむしろ早く入ってきてよベッドで待ってる☆みたいなもんだろうが!! そんなの微塵も考えていないのを知っているので、そこは妄想に留めておくけども!!
俺は自分を取り戻そうと、わざと叩かれるような事を言ってみる。
「レクチェももう一回入ろうよ、俺と一緒にー」
言うなり顔に飛んでくるのは枕。
「入るわけないですから!」
ぼすり、と俺のベッドにレクチェの枕が落ちる。枕が当たってじんじんする顔をさすりながら俺は思った。
あぁそうそう、こういうノリになってくれないと落ち着かないんだ。嫌がられているくらいが丁度いい。
一瞬だけ、城に居た頃の事を思い出す。見初められようと必死に擦り寄ってくる者、嫌々ながらも命令に従いその肌を晒す者、どちらにしても気分の良いものではなかった。
傍から見るとマゾっ気でもあるように見えるかも知れないが、素直に怒って貰える事がとても素晴らしい事だと、俺は城の外に出て思う。
怒りだけは、他の感情に比べて偽りである可能性が限りなく低いから、嫌いじゃない。
「仕方ないなぁ、一人で入ってくるから服脱いで待ってろよ」
「もー! そんな事ばっかり言って!!」
レクチェの怒声を笑って聞き流しながら、俺は部屋の浴室へそそくさと歩いて行った。
脱衣所でライトから貰った服を丁寧に脱ぎ畳みながら、あぁせめてもう一着服が無いと不便だな、と思いつつ明日買う予定を脳内で立てる。
浴室は流石に寒いが、湯をうまく適温にして頭から被った。
さっき昔の事を思い出してしまったせいか、ぼーっと湯を浴びながら、俺はローズの事を考える。
最初はその美貌に目を奪われた。触れれば砕けてしまいそうな繊細な容姿に、真っ白な羽根を背に広げ、月も無い夜に輝く。しかし美しいだけではない、彼女の瞳には強さがあった。
言うなればまるで君臨する者。全てを踏み躙ってでも一人屍の上に立ち、何かを掴み取る覚悟。
それは城の女には無いものだった。強く美しい女、というならばレイアもそうだと思うが、種類が全く違う強さだと思う。
実際、探し当てて傍に居させて貰う事を願った時、ローズは別に俺を好いて近くに居る事を許したわけじゃない。女王が忠実な手駒を手に入れた、そんなようなものだ。
我ながら女の趣味が悪いに違いないだろう。いつまでも手に入る事は無いのだから、いつまでも追い続け、その虜になったまま今も縛られ続けている。
「でも今の追い方は嫌だよなぁ……」
中身が違うのならば追っていても少しも面白くない。俺は俺の為に、彼女を元に戻す。それだけだ。
更新日:2012-08-17 16:11:09