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しかし何でクリスが俺に直でローズの事を聞いてきたのかと思ったら、俺が彼女を探していた事を酒場のマスターから聞いて回って来たらしい。
疑問も解消したところでまずは今後について決めなくてはいけない。
結局決まったのは、不本意だが基本は一緒に行動。街等では各自動いて情報収集と言うところだ。ちなみに旅費は俺が全額負担。ちょっと援助してやろう程度のつもりだったんだが、そう言ったら泣きそうな顔をされたので出来なかった。子供はコレだから困る……そういやコイツの金の出所はどこなのだろうか。
「とりあえず鉱山からこの山脈までは一通りあたってきたんだ」
「それで手がかりゼロですか……嫌われて避けられてるんじゃないですかね」
「断じて否定する」
俺とクリスは地図を片手に今後の行き先を検討中。どうにも手がかりが無さ過ぎてこの場にまだ残るべきか先に進むべきかが悩む。
「そもそも何故離れてしまったんですか?」
もっともな事をクリスが聞いてくる。
「あぁ、ちょっと変な物を掘り出しちゃったんだよな。遺跡発掘とかもしてたんだけどやたらでかい古びた剣が出てきて」
「無断で発掘ですか」
じと目でクリスが突っ込んできた。
「イエス。多分呪いの類が施されてたんだろうな。ローズは剣を手にした途端暴れだして俺は斬られて、気付いたらローズが居なかった」
と、簡易的にここまで説明したところでクリスの表情が固まっている。俺の視線に気がつくと少年のその表情はみるみるうちに怒りに変わっていき……
「使えない人ですね! じゃあ今姉が無事かどうかも危ういではないですか!!」
怒鳴られた。
「いや、そんな事言われてもだな」
と、俺は仕方ないので服を脱ぎ始める。
「!? 何を……」
何やってるんだこの変態、と言いたげなクリスの息がすぐに止まった。それもそのはず、まだ治りきっていないからな。
脱いで出てきたのは包帯でグルグルになった腹部。少し解いてその中を覗かせてやる。切り口は綺麗ではなくノコギリで切ったようにズタズタ、生きているにも関わらず腐敗が続く傷の周辺、それを止める為に焼いた後が更にその部分を醜くしていた。
「斬られただけなんだけどな、この傷ちょっとおかしくてなかなか治らないんだ。斬られた直後に腐敗が始まってきてヤバかったんだぞ」
そう言って俺はまた服を着る。嫌なものを見たかのようにクリスは少し顔を背けていたが、向き直して会話を続けた。
「それ、放っておくとまずくないですか」
「まぁな。でも俺でどうにもならないから、俺以上の術者に仰ぐ必要がある。そこらの病院や治療魔術じゃどうしようも無いぞコレ。結構めんどくさい呪術が掛かってるっぽい」
「でしょうね……」
「多少の怪我だったら追えたんだけど、流石に無理だったんだ」
そこで少し沈黙が続く。ローズの持った剣の正体を掴まない限り見つけたところで連れ戻すのは難しい気がするから、ローズを探しながらその剣について調べる必要がある。その為に、と俺は今のところの目的地としては、怪我を診つつその怪我から色々割り出せそうなマッドな友人&自分の師匠の元へ行こうかな、と思っているんだがそれを優先していいものか悩むところだ。コイツの事だから優先順位は間違いなく俺の体よりサッサと姉探しだろう。
しかしそんな事を考えていると
「姉を見つけるのは確かに急ぎたいのですが、まずはその怪我を治しましょう」
クリスが重い口を開いた。まさかコイツずっとその事を考えていたのか?
「あぁ、気ぃ遣ってくれてありがとな。一応そのつもりで鉱山からこの山脈まで来てたんだ」
「別に……効率を考えたまでです。アテはあるのですか」
可愛くねーやつ。まぁ顔に『照れてます』って書いてあるからヨシとしよう。気は合わないだろうとは思うが、根はそこまで悪いヤツじゃないんだろうな。喋った後気まずそうに窓の外に目を逸らすその幼い顔に、反抗期とか思春期とかそんな単語がいっぱい思い浮かんだ。
「聞いてます?」
俺の返事が無い事に痺れを切らしたらしい。見れば見るほど女ウケしそうな端整な顔立ちの中の、ローズに良く似た少し小さい厚めの唇が尖る。見とれていたとでも言うのか、返事もせずに凝視していた自分が何だか悔しい。
「あぁ、一応二箇所アテはある。一つはフィルに居る俺の師匠、そこで無理なら王都に行かないとダメかな」
そして間髪入れずにクリスの恒例突っ込み。
「エリオットさんの師匠と聞いた時点で今からテンションが下がりますね」
「お前、一言多いんだよ」
やはり気は合いそうに無い。
まぁ行き先は俺の当初の予定通りでいいらしい。荷物を整え、田舎街を後にしたのだった。
【第一部 introduzione ~軽薄な彼の視点~ 完】
疑問も解消したところでまずは今後について決めなくてはいけない。
結局決まったのは、不本意だが基本は一緒に行動。街等では各自動いて情報収集と言うところだ。ちなみに旅費は俺が全額負担。ちょっと援助してやろう程度のつもりだったんだが、そう言ったら泣きそうな顔をされたので出来なかった。子供はコレだから困る……そういやコイツの金の出所はどこなのだろうか。
「とりあえず鉱山からこの山脈までは一通りあたってきたんだ」
「それで手がかりゼロですか……嫌われて避けられてるんじゃないですかね」
「断じて否定する」
俺とクリスは地図を片手に今後の行き先を検討中。どうにも手がかりが無さ過ぎてこの場にまだ残るべきか先に進むべきかが悩む。
「そもそも何故離れてしまったんですか?」
もっともな事をクリスが聞いてくる。
「あぁ、ちょっと変な物を掘り出しちゃったんだよな。遺跡発掘とかもしてたんだけどやたらでかい古びた剣が出てきて」
「無断で発掘ですか」
じと目でクリスが突っ込んできた。
「イエス。多分呪いの類が施されてたんだろうな。ローズは剣を手にした途端暴れだして俺は斬られて、気付いたらローズが居なかった」
と、簡易的にここまで説明したところでクリスの表情が固まっている。俺の視線に気がつくと少年のその表情はみるみるうちに怒りに変わっていき……
「使えない人ですね! じゃあ今姉が無事かどうかも危ういではないですか!!」
怒鳴られた。
「いや、そんな事言われてもだな」
と、俺は仕方ないので服を脱ぎ始める。
「!? 何を……」
何やってるんだこの変態、と言いたげなクリスの息がすぐに止まった。それもそのはず、まだ治りきっていないからな。
脱いで出てきたのは包帯でグルグルになった腹部。少し解いてその中を覗かせてやる。切り口は綺麗ではなくノコギリで切ったようにズタズタ、生きているにも関わらず腐敗が続く傷の周辺、それを止める為に焼いた後が更にその部分を醜くしていた。
「斬られただけなんだけどな、この傷ちょっとおかしくてなかなか治らないんだ。斬られた直後に腐敗が始まってきてヤバかったんだぞ」
そう言って俺はまた服を着る。嫌なものを見たかのようにクリスは少し顔を背けていたが、向き直して会話を続けた。
「それ、放っておくとまずくないですか」
「まぁな。でも俺でどうにもならないから、俺以上の術者に仰ぐ必要がある。そこらの病院や治療魔術じゃどうしようも無いぞコレ。結構めんどくさい呪術が掛かってるっぽい」
「でしょうね……」
「多少の怪我だったら追えたんだけど、流石に無理だったんだ」
そこで少し沈黙が続く。ローズの持った剣の正体を掴まない限り見つけたところで連れ戻すのは難しい気がするから、ローズを探しながらその剣について調べる必要がある。その為に、と俺は今のところの目的地としては、怪我を診つつその怪我から色々割り出せそうなマッドな友人&自分の師匠の元へ行こうかな、と思っているんだがそれを優先していいものか悩むところだ。コイツの事だから優先順位は間違いなく俺の体よりサッサと姉探しだろう。
しかしそんな事を考えていると
「姉を見つけるのは確かに急ぎたいのですが、まずはその怪我を治しましょう」
クリスが重い口を開いた。まさかコイツずっとその事を考えていたのか?
「あぁ、気ぃ遣ってくれてありがとな。一応そのつもりで鉱山からこの山脈まで来てたんだ」
「別に……効率を考えたまでです。アテはあるのですか」
可愛くねーやつ。まぁ顔に『照れてます』って書いてあるからヨシとしよう。気は合わないだろうとは思うが、根はそこまで悪いヤツじゃないんだろうな。喋った後気まずそうに窓の外に目を逸らすその幼い顔に、反抗期とか思春期とかそんな単語がいっぱい思い浮かんだ。
「聞いてます?」
俺の返事が無い事に痺れを切らしたらしい。見れば見るほど女ウケしそうな端整な顔立ちの中の、ローズに良く似た少し小さい厚めの唇が尖る。見とれていたとでも言うのか、返事もせずに凝視していた自分が何だか悔しい。
「あぁ、一応二箇所アテはある。一つはフィルに居る俺の師匠、そこで無理なら王都に行かないとダメかな」
そして間髪入れずにクリスの恒例突っ込み。
「エリオットさんの師匠と聞いた時点で今からテンションが下がりますね」
「お前、一言多いんだよ」
やはり気は合いそうに無い。
まぁ行き先は俺の当初の予定通りでいいらしい。荷物を整え、田舎街を後にしたのだった。
【第一部 introduzione ~軽薄な彼の視点~ 完】
更新日:2011-08-02 00:32:09