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「……俺の魔力に、だ」
エリオットさんの魔力、か。そういえば時々手を光らせたりして何かやっているのは視界に入っている。正直何をしているのかさっぱり分からなかったけれど、まぁ何か魔法でも使っているのだろうと思っていたので深くは気に留めていなかったなぁ。
「エリオットさん、そういえばよく手から光出してますね」
あれが魔力? ん、ちょっと待て……それはおかしい。何故魔力が光となって目に見えるのだろうか。
私の疑問の表情に気付いたエリオットさんは、そのまま説明をしてくれる。
「俺は、一般的に言う魔法ってやつは一切使えない」
「ええっ!?」
私はまさかの発言にとにかく驚いた。魔力が元々無いならまだしも、あるのに使えないとはどういう事か。どんなに才能が無くとも全く使えないなど聞いた事が無い。
「炎も水も風も土も、全く魔力で操る事が出来ないんだ」
「ど、どゆことデスカネ……」
彼の今更過ぎる告白に、どぎまぎしながら私は問う。
「魔力でな、手順通りに魔法を使おうとしても何か別の物になっちまうんだ。俺の手にかかれば炎も水も風も土も、皆ゴミみたいな粉になっちまう」
初めて聞く現象に戸惑いの色を隠せない。幼い子供が拙い魔法を使おうとしたってそんな失敗の仕方は有り得ない、魔法とはそういうものだ。
「代わりにこの魔力で、色々な物質を崩せるんだ。前にクリスの槍を壊した事があっただろ? あんな感じで、物という物を壊せる。金属とかなら上手にやれば粘土みたいに形を作り直す事も出来る」
「そ、それだけ聞けば便利ですね……」
「まぁな。あと魔力自体を練って硬質化させる事も出来る。普段俺が使っている銃の弾丸はコレだ、手から出している光の剣もな」
なるほど、いつも見ている光や、銃弾のサイズ変更が可能な不思議銃のからくりはそういう事だったのか。
「不思議な能力なんですね。すんごく難しそうですけど……」
「ぶっちゃけ難しいぜ。そんなわけで六才くらいまでは魔法を使えない事が俺の一番の悩みだったね。そこへ俺の魔力分析をして使い方を考案してくれたのがルフィーナだったのさ」
「それで師匠、と」
魔法の先生かなとは思っていたけれど、まさかそんな事情があったとは驚かされる。
ん、ルフィーナさん?
「あれ、じゃあレクチェさんの光がエリオットさんの魔力と同じだったとしたら、何となくルフィーナさんとレクチェさんとの繋がりみたいなものが見えてきませんか?」
エリオットさんの魔力を見て作ってみた人造人間、とか! と、突拍子もない発想だったので口に出すのは控えておこう……
そんな私の言葉に、彼は首を横に振る。
「俺も最初はそう思った。けど俺はあんな風な使い方は出来ない。原理的にも出来ると思えない。だから気のせいだ、って言ったんだよ」
「あんな風……アレですか、お花を咲かせたりする、アレ」
「そう、アレ」
アレは凄かった、本気で目を疑った。
「神秘的、だったな。この世のものとは思えなかった……」
あの光景を思い出しているのか、エリオットさんはぼそりとそんな事を言う。きっと誰もがエリオットさんと同様に目を奪われるに違いない、私だってそうだった。
もし私がこんな得体の知れない種族でなければ、彼女のあの光景を見ただけで女神と崇めて陶酔していたかも知れない。
「そういえば」
「ん?」
私は彼に聞かねばならない事があったのだった。
「エリオットさん、これからどうするつもりなんですか?」
「どう、って……どういう意味でだ?」
問いの真意に気付いていないエリオットさんは質問に質問で返してくる。
「いや、ライトさんが言っていたんですけどね、エリオットさんはお城から出して貰えないだろうって」
「あぁそういう事……俺はローズの件が無くたって城に居る気は無いから、抜け出してバイバイだぜ」
その回答に少しだけ嬉しくなり、自然と笑みが零れ出てしまう。気持ちのままに私は顔を緩ませた。
「…………」
「どうしたんですか?」
ふと、急に難しい顔をして黙ってしまったエリオットさんに気付いた私は、思わずその理由を尋ねる。
「いや……」
寝たまま頬を左手でぽりぽりと掻き、言葉を出し渋る彼。何なのだろう?
視線を私と合わせないまま、彼はぼそりと、
「何でそんなに嬉しそうにするかなーって……」
「え? あぁ、それは嬉しかったからですよ」
「あっそ……」
これはもしかしてもしかすると。
「照れてるんですか? やめてください気持ち悪い」
「俺もそう思うわい!! トドメささんでくれ!!」
赤面してそう答える彼を、私は嫌いじゃないと思った。
エリオットさんの魔力、か。そういえば時々手を光らせたりして何かやっているのは視界に入っている。正直何をしているのかさっぱり分からなかったけれど、まぁ何か魔法でも使っているのだろうと思っていたので深くは気に留めていなかったなぁ。
「エリオットさん、そういえばよく手から光出してますね」
あれが魔力? ん、ちょっと待て……それはおかしい。何故魔力が光となって目に見えるのだろうか。
私の疑問の表情に気付いたエリオットさんは、そのまま説明をしてくれる。
「俺は、一般的に言う魔法ってやつは一切使えない」
「ええっ!?」
私はまさかの発言にとにかく驚いた。魔力が元々無いならまだしも、あるのに使えないとはどういう事か。どんなに才能が無くとも全く使えないなど聞いた事が無い。
「炎も水も風も土も、全く魔力で操る事が出来ないんだ」
「ど、どゆことデスカネ……」
彼の今更過ぎる告白に、どぎまぎしながら私は問う。
「魔力でな、手順通りに魔法を使おうとしても何か別の物になっちまうんだ。俺の手にかかれば炎も水も風も土も、皆ゴミみたいな粉になっちまう」
初めて聞く現象に戸惑いの色を隠せない。幼い子供が拙い魔法を使おうとしたってそんな失敗の仕方は有り得ない、魔法とはそういうものだ。
「代わりにこの魔力で、色々な物質を崩せるんだ。前にクリスの槍を壊した事があっただろ? あんな感じで、物という物を壊せる。金属とかなら上手にやれば粘土みたいに形を作り直す事も出来る」
「そ、それだけ聞けば便利ですね……」
「まぁな。あと魔力自体を練って硬質化させる事も出来る。普段俺が使っている銃の弾丸はコレだ、手から出している光の剣もな」
なるほど、いつも見ている光や、銃弾のサイズ変更が可能な不思議銃のからくりはそういう事だったのか。
「不思議な能力なんですね。すんごく難しそうですけど……」
「ぶっちゃけ難しいぜ。そんなわけで六才くらいまでは魔法を使えない事が俺の一番の悩みだったね。そこへ俺の魔力分析をして使い方を考案してくれたのがルフィーナだったのさ」
「それで師匠、と」
魔法の先生かなとは思っていたけれど、まさかそんな事情があったとは驚かされる。
ん、ルフィーナさん?
「あれ、じゃあレクチェさんの光がエリオットさんの魔力と同じだったとしたら、何となくルフィーナさんとレクチェさんとの繋がりみたいなものが見えてきませんか?」
エリオットさんの魔力を見て作ってみた人造人間、とか! と、突拍子もない発想だったので口に出すのは控えておこう……
そんな私の言葉に、彼は首を横に振る。
「俺も最初はそう思った。けど俺はあんな風な使い方は出来ない。原理的にも出来ると思えない。だから気のせいだ、って言ったんだよ」
「あんな風……アレですか、お花を咲かせたりする、アレ」
「そう、アレ」
アレは凄かった、本気で目を疑った。
「神秘的、だったな。この世のものとは思えなかった……」
あの光景を思い出しているのか、エリオットさんはぼそりとそんな事を言う。きっと誰もがエリオットさんと同様に目を奪われるに違いない、私だってそうだった。
もし私がこんな得体の知れない種族でなければ、彼女のあの光景を見ただけで女神と崇めて陶酔していたかも知れない。
「そういえば」
「ん?」
私は彼に聞かねばならない事があったのだった。
「エリオットさん、これからどうするつもりなんですか?」
「どう、って……どういう意味でだ?」
問いの真意に気付いていないエリオットさんは質問に質問で返してくる。
「いや、ライトさんが言っていたんですけどね、エリオットさんはお城から出して貰えないだろうって」
「あぁそういう事……俺はローズの件が無くたって城に居る気は無いから、抜け出してバイバイだぜ」
その回答に少しだけ嬉しくなり、自然と笑みが零れ出てしまう。気持ちのままに私は顔を緩ませた。
「…………」
「どうしたんですか?」
ふと、急に難しい顔をして黙ってしまったエリオットさんに気付いた私は、思わずその理由を尋ねる。
「いや……」
寝たまま頬を左手でぽりぽりと掻き、言葉を出し渋る彼。何なのだろう?
視線を私と合わせないまま、彼はぼそりと、
「何でそんなに嬉しそうにするかなーって……」
「え? あぁ、それは嬉しかったからですよ」
「あっそ……」
これはもしかしてもしかすると。
「照れてるんですか? やめてください気持ち悪い」
「俺もそう思うわい!! トドメささんでくれ!!」
赤面してそう答える彼を、私は嫌いじゃないと思った。
更新日:2011-08-02 22:07:38