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縛られていて身動きが取りにくくもどうにか振り返ると、そこには水色の髪の少年。
「あー……」
昨晩の記憶が戻ってきた。あまりの出来事に頭を抱えたいが、両腕は塞がっている。精神的に頭が痛い、二日酔いで肉体的にも頭が痛い。
そりゃそうだ。時間をかければ、縄も外せない事は無い。起きた時に敵が寝ていれば、そりゃ外そうと努力するだろう。要するに、少年を縛って安心した俺が寝ている間に見事に縄抜けされて逆に縛られてしまったというわけだ。
「ちょっと、外そうぜコレ?」
「外すわけがないでしょう」
キッパリと返答され、まぁその通りなので大人しくする。自分の阿呆さ加減に泣きたくなってきた。
「ツメが甘いにも程がありますよ。こんな馬鹿な人、見たことありません」
少年はそう言うと、一人でテーブルの上にある注文したらしき食事を黙々と食べる。この部屋で注文すると俺の宿代に加算されるのだが、それは分かっているのだろうかコイツは。
「馬鹿だと自分で思ってても、人に言われるとムカつくんだよっ」
「そりゃそうでしょうね」
減り続ける食事。
時々鳴る、俺の腹。
刻々と過ぎる時間。
少年はようやく食事を済ませると俺の方に向き直り、最後に残しておいたようなピーマンを手でつまんで……
「食べます?」
「いらねえよ!!!」
しかし問答無用。
「残すのはよくありません。鼻に入れられるのがイヤなら食べてください」
子供が嫌いな野菜上位の緑の物体を、口に突っ込まれた。
仕方なしに噛んでいると、少年はようやく本題を切り出す。
「ローズを、知っているんですね?」
当たり障りの無い、それでいて自分の事には触れさせないような一言め。ムカつくなぁ。
「何だよ、他人のフリしたってダメだからな。どう考えたってお前血縁関係だろ、似すぎてる」
少年は一瞬不満そうな表情をしたかと思うと、すぐに笑顔にかわってフォークを俺に向けてくる。
「捕まっている側は貴方です、答 え な さ い」
笑顔の脅しは怖いというが、その容姿のせいもありそこまで怖くない。まぁ血縁関係という事は、ローズの敵という線は薄いだろう。
「あぁ、知ってるよ」
観念して答えてやる。
「今、彼女はどこへ?」
「知らない」
「……まぁ聞き回っていたようですし、そうでしょうね。では、どこまで知っているのでしょう?」
「まぁどこまでって言っても大した行き先は分からない。カンドラ鉱山付近で離れちまった程度だ」
正直に答えると少年は訝しげにまた尋ねてくる。
「離れた、という事は共に行動をしていたのでしょうか?」
「相方だからな」
ピシッ
……と、場の空気の固まる音がしたような気がした。どうやら単に少年が、持っていたフォークにを少しヒビ入れたらしい。普通は曲がるものをどういう力を入れたらこんな風にヒビ入るんだ。
「もうすぐ親戚になるかも知れないんだから、この縄外そうぜ?」
「親戚になる前に亡き者にした方がよさそうですね」
今度の笑顔は少し怖いぜ少年。多少なり下手に出ないと俺の未来が色々危ない予感がする。仕方なく、妥協案を出してみた。
「……親戚はともかく、だ。お前が賞金稼ぎなわけでなく、ローズに危害を与える気も無いのなら俺とお前は『ローズを探している』という面において目的は同じだろ? 争うのは馬鹿馬鹿しいと思わないか?」
少年の表情が冷たい笑顔からしかめっ面に変わる。
「彼女に危害を与える気はありません……が、何を言いたいんです」
「休戦して、お互いちゃんと情報交換という事で」
「今の私に、それは得はありません」
「損でもないと思うんだけどな」
むむむむ、と少年が考え込む。もう一押しか。
「休戦して放してくれるなら、旅の費用を援助したりしても構わないが」
「休戦しましょうか」
そんなに金に困っているのか、即答した少年は嬉しさを隠してきれていない表情でにんまりとしながら縄に手を伸ばすと、
「嘘吐いたら怒りますよ、もうあの銃も通用しませんからね?」
一応釘を刺して、解き始める。
「あぁ、お前が敵でない以上、こんな嘘を吐く必要も無いさ」
これは一応、俺の本音だ。するりと縄が解け、俺の両腕はやっと自由になった。肩の調子が悪いのでとりあえず背伸びだけして、先程まで背もたれになっていたベッドを椅子代わりに座る。
「俺はエリオット。否定されようが事実、ローズの相方やってた元盗賊。後はさっきの通り、離れちまったから探しているだけだ。お前は?」
「……クリスです。ローズは私の姉にあたります。というか盗賊の分際で貴族みたいな名前とか聞いてて恥ずかしいですね。ゴンザレスに改名でもしたらどうですか?」
「お前ほんっっっっとムカつくな」
「あー……」
昨晩の記憶が戻ってきた。あまりの出来事に頭を抱えたいが、両腕は塞がっている。精神的に頭が痛い、二日酔いで肉体的にも頭が痛い。
そりゃそうだ。時間をかければ、縄も外せない事は無い。起きた時に敵が寝ていれば、そりゃ外そうと努力するだろう。要するに、少年を縛って安心した俺が寝ている間に見事に縄抜けされて逆に縛られてしまったというわけだ。
「ちょっと、外そうぜコレ?」
「外すわけがないでしょう」
キッパリと返答され、まぁその通りなので大人しくする。自分の阿呆さ加減に泣きたくなってきた。
「ツメが甘いにも程がありますよ。こんな馬鹿な人、見たことありません」
少年はそう言うと、一人でテーブルの上にある注文したらしき食事を黙々と食べる。この部屋で注文すると俺の宿代に加算されるのだが、それは分かっているのだろうかコイツは。
「馬鹿だと自分で思ってても、人に言われるとムカつくんだよっ」
「そりゃそうでしょうね」
減り続ける食事。
時々鳴る、俺の腹。
刻々と過ぎる時間。
少年はようやく食事を済ませると俺の方に向き直り、最後に残しておいたようなピーマンを手でつまんで……
「食べます?」
「いらねえよ!!!」
しかし問答無用。
「残すのはよくありません。鼻に入れられるのがイヤなら食べてください」
子供が嫌いな野菜上位の緑の物体を、口に突っ込まれた。
仕方なしに噛んでいると、少年はようやく本題を切り出す。
「ローズを、知っているんですね?」
当たり障りの無い、それでいて自分の事には触れさせないような一言め。ムカつくなぁ。
「何だよ、他人のフリしたってダメだからな。どう考えたってお前血縁関係だろ、似すぎてる」
少年は一瞬不満そうな表情をしたかと思うと、すぐに笑顔にかわってフォークを俺に向けてくる。
「捕まっている側は貴方です、答 え な さ い」
笑顔の脅しは怖いというが、その容姿のせいもありそこまで怖くない。まぁ血縁関係という事は、ローズの敵という線は薄いだろう。
「あぁ、知ってるよ」
観念して答えてやる。
「今、彼女はどこへ?」
「知らない」
「……まぁ聞き回っていたようですし、そうでしょうね。では、どこまで知っているのでしょう?」
「まぁどこまでって言っても大した行き先は分からない。カンドラ鉱山付近で離れちまった程度だ」
正直に答えると少年は訝しげにまた尋ねてくる。
「離れた、という事は共に行動をしていたのでしょうか?」
「相方だからな」
ピシッ
……と、場の空気の固まる音がしたような気がした。どうやら単に少年が、持っていたフォークにを少しヒビ入れたらしい。普通は曲がるものをどういう力を入れたらこんな風にヒビ入るんだ。
「もうすぐ親戚になるかも知れないんだから、この縄外そうぜ?」
「親戚になる前に亡き者にした方がよさそうですね」
今度の笑顔は少し怖いぜ少年。多少なり下手に出ないと俺の未来が色々危ない予感がする。仕方なく、妥協案を出してみた。
「……親戚はともかく、だ。お前が賞金稼ぎなわけでなく、ローズに危害を与える気も無いのなら俺とお前は『ローズを探している』という面において目的は同じだろ? 争うのは馬鹿馬鹿しいと思わないか?」
少年の表情が冷たい笑顔からしかめっ面に変わる。
「彼女に危害を与える気はありません……が、何を言いたいんです」
「休戦して、お互いちゃんと情報交換という事で」
「今の私に、それは得はありません」
「損でもないと思うんだけどな」
むむむむ、と少年が考え込む。もう一押しか。
「休戦して放してくれるなら、旅の費用を援助したりしても構わないが」
「休戦しましょうか」
そんなに金に困っているのか、即答した少年は嬉しさを隠してきれていない表情でにんまりとしながら縄に手を伸ばすと、
「嘘吐いたら怒りますよ、もうあの銃も通用しませんからね?」
一応釘を刺して、解き始める。
「あぁ、お前が敵でない以上、こんな嘘を吐く必要も無いさ」
これは一応、俺の本音だ。するりと縄が解け、俺の両腕はやっと自由になった。肩の調子が悪いのでとりあえず背伸びだけして、先程まで背もたれになっていたベッドを椅子代わりに座る。
「俺はエリオット。否定されようが事実、ローズの相方やってた元盗賊。後はさっきの通り、離れちまったから探しているだけだ。お前は?」
「……クリスです。ローズは私の姉にあたります。というか盗賊の分際で貴族みたいな名前とか聞いてて恥ずかしいですね。ゴンザレスに改名でもしたらどうですか?」
「お前ほんっっっっとムカつくな」
更新日:2011-06-20 06:45:36