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パンッ! パンッ! と響く二発の発砲音で私は目が覚める。
「これは……」
目の前の状況が全く把握出来ずにいた。とにかく手が痛いのと、足元には足から血を流して倒れているレクチェさん。そして大剣が落ちている。
「おい、大丈夫か!!」
エリオットさんが銃を持ったままこちらに駆け寄ってくる。何か予想が出来てきた。この痛みはきっと彼にまた撃たれたのだろう。
だがレクチェさんに関してはどういう事か今ひとつ分からない。彼女は私が意識を失う前までの不思議な光を既に纏ってはおらず、虚ろだった目には光がきちんと宿っていた。ここまでは良い事なのだが、足の怪我の理由が想像出来ない。
先程までは彼女の力で雪すらも『春』に変化していたが、今は雪はただ深々と積もって、咲いてしまった草花を白く塗り替えていた。
「痛いよぅ……」
彼女は涙ぐんでこちらを見ているが、もしかして私がレクチェさんの足を攻撃してしまったのだろうか?
ルフィーナさんも駆け寄ってくるとレクチェさんの足をすぐに看て、マントを無理に破ってレクチェさんの足に捲いた。
「エリ君、後でじっくりお仕置きね」
「えぇー!?」
どうやら私の手と同様にレクチェさんの傷もエリオットさんがやったようだ。じと目で彼を睨むルフィーナさんの様子が、それを物語っている。
「相変わらず荒療治で助けてくれますねぇ……」
痛む手を撫でながら、私も彼を見た。すると渋い表情で、
「今度は手加減してないんだけどな」
「え」
かなり酷い話ではあるが、私の手は少なくとも骨は折れたりしていないようだ。変化すると確かに身体能力は跳ね上がるが、ここまで頑丈になっているとは……
「でも痛かったけど、私相手だからこそ無茶も出来て剣を折らずに手放す事が出来たんですものね」
そう、結果としてはオーライだ。不満よりも今は姉さんを救えた事を喜ぼう。
「……そういえば姉さんはどこです?」
私は周囲を見渡す。すると、メイド姿の姉が少し離れた物陰から歩いてきているところだった。
「お、気がついたみたいだな!」
エリオットさんもそれを見て表情がパァッと明るくなる。だけどその声を聞いたルフィーナさんの反応は少し変だった。
「え!?」
まるで信じられない、と言った風の驚き方。あやつられていたのにそんなにすぐに目を覚ますはずがない、と言ったところだろうか?
私は彼女のその反応に深く疑問を持たずに姉に駆け寄り、その胸に顔をうずめる。
「姉さん……っ!」
恥ずかしい事に、皆の前なのに泣いてしまいそうになる。
「ちっ、さっさと終わらせろよな。次は俺の番だぞー」
エリオットさんが茶々を入れてくるが、もうそんなの気にならない。今ならいくらだってバカにされてもいい。
堪えきれなくなった涙腺は、私の頬にいくつもの滴を落としていた。
「心配かけてごめんね」
頭の少し上のほうで、姉さんの語りかける声が聞こえる。ずっと聞きたかった、優しい声。
姉は私の頭をくしゃくしゃと撫でると、抱きついていた私をゆっくり体から離す。
「さて、と……」
「?」
そう言って姉さんはエリオットさんのほうに歩いていく。
「おお、ローズ。ちゃんと俺の事も思い出してくれたんだなー!」
満面の笑みで、ハグを要求するが如く両手をいっぱいに広げて待ち構えるエリオットさん。
それを見てクスッと少し儚げに笑うと姉さんはそのままエリオットさんの腕のに包まれた。
うわぁ、何だかもぞもぞする。
「……!」
声にならない声で、彼は姉との抱擁を堪能していた。気分は良くないが、今それを引き剥がすというのは無粋というもの。私は苦笑いでそれを見つめる。
謎はいくつか残ったままだけど、姉さんは戻ってきたのだ。以前エリオットさんが言っていたように、私達の目的はコレだけだ。達成されたのだから他に無理に立ち入る必要など無い。
姉はぎゅーっと抱きしめられたままだったが、ふと少し彼の胸から顔を離し、
「これはオマケ」
そう言ってエリオットさんの頬に軽くキスをした。
「ね、姉さん!?」
驚く私と、不意打ちのキスににやけるエリオットさんに微笑して、姉さんはその腕からするりと抜ける。
そして、
その傍に落ちていた剣を持ち上げた。
「これは……」
目の前の状況が全く把握出来ずにいた。とにかく手が痛いのと、足元には足から血を流して倒れているレクチェさん。そして大剣が落ちている。
「おい、大丈夫か!!」
エリオットさんが銃を持ったままこちらに駆け寄ってくる。何か予想が出来てきた。この痛みはきっと彼にまた撃たれたのだろう。
だがレクチェさんに関してはどういう事か今ひとつ分からない。彼女は私が意識を失う前までの不思議な光を既に纏ってはおらず、虚ろだった目には光がきちんと宿っていた。ここまでは良い事なのだが、足の怪我の理由が想像出来ない。
先程までは彼女の力で雪すらも『春』に変化していたが、今は雪はただ深々と積もって、咲いてしまった草花を白く塗り替えていた。
「痛いよぅ……」
彼女は涙ぐんでこちらを見ているが、もしかして私がレクチェさんの足を攻撃してしまったのだろうか?
ルフィーナさんも駆け寄ってくるとレクチェさんの足をすぐに看て、マントを無理に破ってレクチェさんの足に捲いた。
「エリ君、後でじっくりお仕置きね」
「えぇー!?」
どうやら私の手と同様にレクチェさんの傷もエリオットさんがやったようだ。じと目で彼を睨むルフィーナさんの様子が、それを物語っている。
「相変わらず荒療治で助けてくれますねぇ……」
痛む手を撫でながら、私も彼を見た。すると渋い表情で、
「今度は手加減してないんだけどな」
「え」
かなり酷い話ではあるが、私の手は少なくとも骨は折れたりしていないようだ。変化すると確かに身体能力は跳ね上がるが、ここまで頑丈になっているとは……
「でも痛かったけど、私相手だからこそ無茶も出来て剣を折らずに手放す事が出来たんですものね」
そう、結果としてはオーライだ。不満よりも今は姉さんを救えた事を喜ぼう。
「……そういえば姉さんはどこです?」
私は周囲を見渡す。すると、メイド姿の姉が少し離れた物陰から歩いてきているところだった。
「お、気がついたみたいだな!」
エリオットさんもそれを見て表情がパァッと明るくなる。だけどその声を聞いたルフィーナさんの反応は少し変だった。
「え!?」
まるで信じられない、と言った風の驚き方。あやつられていたのにそんなにすぐに目を覚ますはずがない、と言ったところだろうか?
私は彼女のその反応に深く疑問を持たずに姉に駆け寄り、その胸に顔をうずめる。
「姉さん……っ!」
恥ずかしい事に、皆の前なのに泣いてしまいそうになる。
「ちっ、さっさと終わらせろよな。次は俺の番だぞー」
エリオットさんが茶々を入れてくるが、もうそんなの気にならない。今ならいくらだってバカにされてもいい。
堪えきれなくなった涙腺は、私の頬にいくつもの滴を落としていた。
「心配かけてごめんね」
頭の少し上のほうで、姉さんの語りかける声が聞こえる。ずっと聞きたかった、優しい声。
姉は私の頭をくしゃくしゃと撫でると、抱きついていた私をゆっくり体から離す。
「さて、と……」
「?」
そう言って姉さんはエリオットさんのほうに歩いていく。
「おお、ローズ。ちゃんと俺の事も思い出してくれたんだなー!」
満面の笑みで、ハグを要求するが如く両手をいっぱいに広げて待ち構えるエリオットさん。
それを見てクスッと少し儚げに笑うと姉さんはそのままエリオットさんの腕のに包まれた。
うわぁ、何だかもぞもぞする。
「……!」
声にならない声で、彼は姉との抱擁を堪能していた。気分は良くないが、今それを引き剥がすというのは無粋というもの。私は苦笑いでそれを見つめる。
謎はいくつか残ったままだけど、姉さんは戻ってきたのだ。以前エリオットさんが言っていたように、私達の目的はコレだけだ。達成されたのだから他に無理に立ち入る必要など無い。
姉はぎゅーっと抱きしめられたままだったが、ふと少し彼の胸から顔を離し、
「これはオマケ」
そう言ってエリオットさんの頬に軽くキスをした。
「ね、姉さん!?」
驚く私と、不意打ちのキスににやけるエリオットさんに微笑して、姉さんはその腕からするりと抜ける。
そして、
その傍に落ちていた剣を持ち上げた。
更新日:2011-07-11 00:44:40