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俯いていた少年の顔が上がったかと思うと、形相が先ほどとはまるで変わっている少年が息を吸い、叫んだ。
「***********!!!!」
言葉にならない叫び声、声で弾き返される銃弾、吹き飛びそうになる俺の体と周囲の木々。おいおい、夜だってのにこんな大声は近所迷惑すぎる。
声だけで銃弾を弾き返せるような種族なんて俺は聞いた事が無いが、少年のやたらと余裕な態度もこの先天的な能力値のせいなのだろうか。
「お前、ナニ?」
俺はきっと口元は笑っていても目は笑っていないだろう。焦りをひた隠しするつもりで問いかける。少年は先程まで確かにただのヒトだった。しかし、今は黒い角、羽、尻尾まで生えており、牙を剥き出しにして目も若干だがつり上がっている。
羽と尻尾によって破けた服はそれでいいのか?
あえていうのならその少年の姿形はまるで、
「悪魔ですよ」
少年が答えた。
……ほんとかよ。声にならない独白を呟いているんだかいないんだか。
少年の勝ち誇ったその笑みが最高にムカつく。確かに悪魔そのものの外見だ。
けれど、コイツが悪魔に変化したそのおかげで俺はある事とコレを結びつける事が出来た。予想が正しければ俺的には休戦した方がいいのだが、こっちからハイ休戦です、と言って収まるような状況ではない。
まずは駆け引きにでも出るとしよう。
「俺さ、お前とは全く違うけど……ある意味似ている種族を見たことがあるんだよね」
じり、と少年に近づきつつ喋る。
「お前はまるで悪魔なわけだが、そいつは普段ヒトそのものなのに、自分の意思で天使みたいな姿に変身できるヤツなんだ」
また一歩近づく。気付かれたらしい。
「近づいても無駄ですよ、だからどうしたんです」
お前の戯言を聞いている暇などない、そんな顔で突き放される。多分事実を指摘されそうで苛々しているようなので、もう少し確信に触れておこう。
「まぁ聞けって。んで、そいつとお前、よく考えてみるとヒトの形をしている時の外見が割と似てるんだけど、これって偶然か?」
更に近づく。距離にして槍三本分くらい、十分か。
俺は自分で予想しておきながらその事実に吹き出しそうになる。今の俺の顔はさぞかし少年を逆撫でするような表情をしている事だろう。どうしようもなくおかしくて口元が引きつる。
だって、出会った時から尽く俺の勘に触りまくっていたコイツが、
「お前、ローズの血縁関係か何かだろ」
まさか、俺の愛する女の肉親かも知れないだなんて、
「答える義理はありません!!!!」
イヤ過ぎて笑いが止まらない。
少年は爪を立てて俺に向かってきた。距離は近いし速さも尋常じゃない。普通だったら俺は成す術も無く切り裂かれているだろう。
しかし、予測していれば何て事は無い。怒りに身を任せた攻撃は単調、真っ直ぐ正面から向かってくるだけのストレート剛速球。
「ばーか」
俺は左の腰元の銃を即座に抜き、引き金を引いた。
「そんなものっ……!?」
少年は弾丸を避けようとする、が、銃口から出たのは弾丸では無い。かわりにシュッと煙が舞う。
俺に向かってきたおかげで真っ向から催眠ガスを浴び、見事に俺の胸元に即倒する少年。マッドな知り合いに作らせた超強力&即効性の催眠ガスだ。吸いすぎると死んでしまうくらいの代物だが、コイツなら大丈夫だろう。
俺はあっけなく倒れてきた少年を、不本意だが宿に連れて行くべくお姫様だっこで抱きかかえる。扱いは丁重にしなくてはいけない。
何故なら、将来俺の親戚になるのかも知れないのだから。
しかし身長とその細さの割には重いなコイツ。俺は死んだように眠っているその少年を抱きかかえたまま、宿に入るとまずは少年をベッドに寝かせ、荷物からロープを取り出した。まぁ当然だよな。
こちらも先程使用した銃に続いて特製、力任せじゃ切れない上に、燃えないよう魔術も施されている。ちなみに魔法と魔術は違うので勘違いしないように。
少年を雁字搦めに縛り終わり、いつ起きるか分からないのでとりあえず飲みなおそうと酒を取り出し飲んだ。
…………
……ちょっと
聞いてるんですか
ねぇ
起きてくださいよ
「んん?」
聞きなれない声に目を覚ますと、部屋は随分明るかった。昨晩の記憶もあまり無く、まずは周囲に目をやる。日差しの暑さからしてもう昼過ぎか。床には随分と散らばった酒瓶達。愛しい酒瓶達は残念ながらどいつもこいつも中身は無し。
俺は、手が塞がっているので足で酒瓶を蹴った。
「んんん??」
よく見てみると手が後ろで縛られていた。これはどう見ても俺の自前のロープだ。記憶がハッキリしなくてワケが分からなくなっているところに、背中の方から声がする。
「いつまで寝ぼけているんですか」
「***********!!!!」
言葉にならない叫び声、声で弾き返される銃弾、吹き飛びそうになる俺の体と周囲の木々。おいおい、夜だってのにこんな大声は近所迷惑すぎる。
声だけで銃弾を弾き返せるような種族なんて俺は聞いた事が無いが、少年のやたらと余裕な態度もこの先天的な能力値のせいなのだろうか。
「お前、ナニ?」
俺はきっと口元は笑っていても目は笑っていないだろう。焦りをひた隠しするつもりで問いかける。少年は先程まで確かにただのヒトだった。しかし、今は黒い角、羽、尻尾まで生えており、牙を剥き出しにして目も若干だがつり上がっている。
羽と尻尾によって破けた服はそれでいいのか?
あえていうのならその少年の姿形はまるで、
「悪魔ですよ」
少年が答えた。
……ほんとかよ。声にならない独白を呟いているんだかいないんだか。
少年の勝ち誇ったその笑みが最高にムカつく。確かに悪魔そのものの外見だ。
けれど、コイツが悪魔に変化したそのおかげで俺はある事とコレを結びつける事が出来た。予想が正しければ俺的には休戦した方がいいのだが、こっちからハイ休戦です、と言って収まるような状況ではない。
まずは駆け引きにでも出るとしよう。
「俺さ、お前とは全く違うけど……ある意味似ている種族を見たことがあるんだよね」
じり、と少年に近づきつつ喋る。
「お前はまるで悪魔なわけだが、そいつは普段ヒトそのものなのに、自分の意思で天使みたいな姿に変身できるヤツなんだ」
また一歩近づく。気付かれたらしい。
「近づいても無駄ですよ、だからどうしたんです」
お前の戯言を聞いている暇などない、そんな顔で突き放される。多分事実を指摘されそうで苛々しているようなので、もう少し確信に触れておこう。
「まぁ聞けって。んで、そいつとお前、よく考えてみるとヒトの形をしている時の外見が割と似てるんだけど、これって偶然か?」
更に近づく。距離にして槍三本分くらい、十分か。
俺は自分で予想しておきながらその事実に吹き出しそうになる。今の俺の顔はさぞかし少年を逆撫でするような表情をしている事だろう。どうしようもなくおかしくて口元が引きつる。
だって、出会った時から尽く俺の勘に触りまくっていたコイツが、
「お前、ローズの血縁関係か何かだろ」
まさか、俺の愛する女の肉親かも知れないだなんて、
「答える義理はありません!!!!」
イヤ過ぎて笑いが止まらない。
少年は爪を立てて俺に向かってきた。距離は近いし速さも尋常じゃない。普通だったら俺は成す術も無く切り裂かれているだろう。
しかし、予測していれば何て事は無い。怒りに身を任せた攻撃は単調、真っ直ぐ正面から向かってくるだけのストレート剛速球。
「ばーか」
俺は左の腰元の銃を即座に抜き、引き金を引いた。
「そんなものっ……!?」
少年は弾丸を避けようとする、が、銃口から出たのは弾丸では無い。かわりにシュッと煙が舞う。
俺に向かってきたおかげで真っ向から催眠ガスを浴び、見事に俺の胸元に即倒する少年。マッドな知り合いに作らせた超強力&即効性の催眠ガスだ。吸いすぎると死んでしまうくらいの代物だが、コイツなら大丈夫だろう。
俺はあっけなく倒れてきた少年を、不本意だが宿に連れて行くべくお姫様だっこで抱きかかえる。扱いは丁重にしなくてはいけない。
何故なら、将来俺の親戚になるのかも知れないのだから。
しかし身長とその細さの割には重いなコイツ。俺は死んだように眠っているその少年を抱きかかえたまま、宿に入るとまずは少年をベッドに寝かせ、荷物からロープを取り出した。まぁ当然だよな。
こちらも先程使用した銃に続いて特製、力任せじゃ切れない上に、燃えないよう魔術も施されている。ちなみに魔法と魔術は違うので勘違いしないように。
少年を雁字搦めに縛り終わり、いつ起きるか分からないのでとりあえず飲みなおそうと酒を取り出し飲んだ。
…………
……ちょっと
聞いてるんですか
ねぇ
起きてくださいよ
「んん?」
聞きなれない声に目を覚ますと、部屋は随分明るかった。昨晩の記憶もあまり無く、まずは周囲に目をやる。日差しの暑さからしてもう昼過ぎか。床には随分と散らばった酒瓶達。愛しい酒瓶達は残念ながらどいつもこいつも中身は無し。
俺は、手が塞がっているので足で酒瓶を蹴った。
「んんん??」
よく見てみると手が後ろで縛られていた。これはどう見ても俺の自前のロープだ。記憶がハッキリしなくてワケが分からなくなっているところに、背中の方から声がする。
「いつまで寝ぼけているんですか」
更新日:2011-07-30 20:12:07