- 33 / 565 ページ
◇◇◇ ◇◇◇
「フィクサー様大変です! 使い魔がキスシーンを映していますっ!!!」
男装の麗人が上司に報告する。
「うわあああああ!!! 俺ですら触れた事無いのにいいいいいい!!!! なんだあいつまじころすぶっころすいますぐころす」
「落ち着いてくださいフィクサー様、今とってもイイところです!」
とある一室に、出歯亀が二人。
◇◇◇ ◇◇◇
私とレクチェさんは可愛いピンクのもこもこした防寒具をお揃いで買って、図書館の非公開書庫まで戻ってきた。のだが。
とりあえず目の前で何が起こっているのかいまいち判断し難い状況である。
部屋に戻ってみると何故かエリオットさんがルフィーナさんを口説いているようだったのだ。事は一方的なようでルフィーナさんのほうは呆れた顔であしらっている。
ルフィーナさんはこちらに気付いているのかいないのか分からないがエリオットさんは間違いなく気付いていないようなので、そのまま入り口で二人の様子を見る事にした。
「ほんともう一生のお願いだから!」
「あのねぇ、そこまで許すとでも思ってるの?」
「頼むよ最近とんとご無沙汰なんだって!」
何がご無沙汰なのかよく分からないが、机の上でルフィーナさんにどんどん迫っていくエリオットさん。
既に彼は彼女の上に乗りかかった体勢になっていて、そろそろ止めたほうがいいのだろうかと悩まないでもない。
「エリ君のご無沙汰なんて知ったこっちゃないわよ」
「どーせルフィーナも全然なんだろ? たまにはいいじゃ……」
そこまで言ったところでルフィーナさんからアホ男の顎に見事なアッパーが炸裂した。勢いで床にどさりと倒れこむアホ。
「おかえりなさい、二人とも」
スカートの埃を払いながら、いつもの笑顔ではないがそれでも平然とした表情で私達に挨拶してくる。やはり居る事に気付いていたようだ。
「え"っ」
気付いていなかったアホがアホな声をあげた。
「本当に救いようのない変態なんだね、この人!」
レクチェさんが笑いながら私に語りかける。目は笑っていない。私も笑えない。
「姉さんというものがありながら、よくもまぁ……」
私は背中の槍に手をかける。
「ちょ、すとっぷ、ストーップ! これにはワケがっ!」
「どんなワケがあったら積極的に他の女性を口説いていいんでしょうかね!?」
そう言って槍の布を取って、私はエリオットさんめがけてぶん回した。
「本棚壊さないでねー」
ルフィーナさんは勿論止めるはずもなく、注意だけして傍観に回る。何やらわめいて走り回るアホを、全力で追いかけてやった。
「避けたら本棚が壊れますよ!」
「避けるに決まってんだろ!?」
それだけ告げて思いっきり槍を振り上げる。しかしそこへ、
「えっ!?」
ルフィーナさんの驚く声だった。ここまで驚くのは初めて見るかも知れない。何事か、と振り向くとルフィーナさんは驚愕した顔でこちらを見ていた。
「ど、どうしました?」
ルフィーナさんの反応に先程までの毒気を抜かれて、おそるおそる問いかける。
「その槍……どうしたの?」
あぁそういえば槍の事は彼女に伝えていなかったか。彼女ときちんと事の顛末を話したのはこの槍を手に入れる前の、一度目に立ち寄った時だけだった気がする。
「例の鉱山で拾った物ですよ。まぁ、ただ拾ったわけではないんですけど」
そして詳しく説明をした。
「そっか、その槍だけそんな事に……」
「特に何も起こらなければあのまま彼に渡していたと思います」
改めて手の中にある槍に目を向ける。
私の身長くらいの長い柄の先に、両刃に成っている槍穂。片側は小さい鎌に近い斧のような切っ先だが、もう片方は剣のように真っ直ぐな刃である。装飾は1つの大きな赤い石が鎌側の刃にはめ込まれている他は、見覚えの無い紋様が柄に彫られているくらいだ。
「本来精霊の宿った武器だからと言って、簡単に持ち主を意のままに操るだなんてまず出来ないのよ」
確かにあの時の長身の男も、そう言っていた。だから大剣だけが特別なのだ、と。
「じゃあどうしてローズが持ってしまった剣だけはそんな事が出来るんだ?」
難を逃れたエリオットさんが、先程の痴態は無かったかのように話に加わった。だが確かにもっともな疑問だと思う。
「答えていいものか迷うわね」
「今更だろ、話せよ」
その問いかけに少し間をおいて、彼女は再度口を開いた。
「元々の精霊の性格のせいで強くなりすぎた、ってところかしら?」
私はその言葉を聞いて、戦慄を覚える。
だってそれは、
「つまり武器は育って、そして強くなると持ち主にまで影響を及ぼす、と」
エリオットさんがその先の答えを言った。
「フィクサー様大変です! 使い魔がキスシーンを映していますっ!!!」
男装の麗人が上司に報告する。
「うわあああああ!!! 俺ですら触れた事無いのにいいいいいい!!!! なんだあいつまじころすぶっころすいますぐころす」
「落ち着いてくださいフィクサー様、今とってもイイところです!」
とある一室に、出歯亀が二人。
◇◇◇ ◇◇◇
私とレクチェさんは可愛いピンクのもこもこした防寒具をお揃いで買って、図書館の非公開書庫まで戻ってきた。のだが。
とりあえず目の前で何が起こっているのかいまいち判断し難い状況である。
部屋に戻ってみると何故かエリオットさんがルフィーナさんを口説いているようだったのだ。事は一方的なようでルフィーナさんのほうは呆れた顔であしらっている。
ルフィーナさんはこちらに気付いているのかいないのか分からないがエリオットさんは間違いなく気付いていないようなので、そのまま入り口で二人の様子を見る事にした。
「ほんともう一生のお願いだから!」
「あのねぇ、そこまで許すとでも思ってるの?」
「頼むよ最近とんとご無沙汰なんだって!」
何がご無沙汰なのかよく分からないが、机の上でルフィーナさんにどんどん迫っていくエリオットさん。
既に彼は彼女の上に乗りかかった体勢になっていて、そろそろ止めたほうがいいのだろうかと悩まないでもない。
「エリ君のご無沙汰なんて知ったこっちゃないわよ」
「どーせルフィーナも全然なんだろ? たまにはいいじゃ……」
そこまで言ったところでルフィーナさんからアホ男の顎に見事なアッパーが炸裂した。勢いで床にどさりと倒れこむアホ。
「おかえりなさい、二人とも」
スカートの埃を払いながら、いつもの笑顔ではないがそれでも平然とした表情で私達に挨拶してくる。やはり居る事に気付いていたようだ。
「え"っ」
気付いていなかったアホがアホな声をあげた。
「本当に救いようのない変態なんだね、この人!」
レクチェさんが笑いながら私に語りかける。目は笑っていない。私も笑えない。
「姉さんというものがありながら、よくもまぁ……」
私は背中の槍に手をかける。
「ちょ、すとっぷ、ストーップ! これにはワケがっ!」
「どんなワケがあったら積極的に他の女性を口説いていいんでしょうかね!?」
そう言って槍の布を取って、私はエリオットさんめがけてぶん回した。
「本棚壊さないでねー」
ルフィーナさんは勿論止めるはずもなく、注意だけして傍観に回る。何やらわめいて走り回るアホを、全力で追いかけてやった。
「避けたら本棚が壊れますよ!」
「避けるに決まってんだろ!?」
それだけ告げて思いっきり槍を振り上げる。しかしそこへ、
「えっ!?」
ルフィーナさんの驚く声だった。ここまで驚くのは初めて見るかも知れない。何事か、と振り向くとルフィーナさんは驚愕した顔でこちらを見ていた。
「ど、どうしました?」
ルフィーナさんの反応に先程までの毒気を抜かれて、おそるおそる問いかける。
「その槍……どうしたの?」
あぁそういえば槍の事は彼女に伝えていなかったか。彼女ときちんと事の顛末を話したのはこの槍を手に入れる前の、一度目に立ち寄った時だけだった気がする。
「例の鉱山で拾った物ですよ。まぁ、ただ拾ったわけではないんですけど」
そして詳しく説明をした。
「そっか、その槍だけそんな事に……」
「特に何も起こらなければあのまま彼に渡していたと思います」
改めて手の中にある槍に目を向ける。
私の身長くらいの長い柄の先に、両刃に成っている槍穂。片側は小さい鎌に近い斧のような切っ先だが、もう片方は剣のように真っ直ぐな刃である。装飾は1つの大きな赤い石が鎌側の刃にはめ込まれている他は、見覚えの無い紋様が柄に彫られているくらいだ。
「本来精霊の宿った武器だからと言って、簡単に持ち主を意のままに操るだなんてまず出来ないのよ」
確かにあの時の長身の男も、そう言っていた。だから大剣だけが特別なのだ、と。
「じゃあどうしてローズが持ってしまった剣だけはそんな事が出来るんだ?」
難を逃れたエリオットさんが、先程の痴態は無かったかのように話に加わった。だが確かにもっともな疑問だと思う。
「答えていいものか迷うわね」
「今更だろ、話せよ」
その問いかけに少し間をおいて、彼女は再度口を開いた。
「元々の精霊の性格のせいで強くなりすぎた、ってところかしら?」
私はその言葉を聞いて、戦慄を覚える。
だってそれは、
「つまり武器は育って、そして強くなると持ち主にまで影響を及ぼす、と」
エリオットさんがその先の答えを言った。
更新日:2012-02-29 19:11:58