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全くこの二人は本当に仲が悪いようで。
とはいえ聞いていた話とは違う。大剣以外の武器は持ち主に従順では無かったのか?
「精霊さんはこの女性を殺せばいいと言っていましたが……」
「理由も無しに美人を殺せというのはどうなんだ?」
「美人に限りませんよ、そこは」
精霊にもう一度問いかけてみるのが早いのだろうが、また操られてしまっても困る。どうしたらいいものか悩んでいると、
「って何やってるんですか!!」
エリオットさんが円筒型のガラスに繋がっている機械をいじり始めていた。
「出して話してみれば殺すべきか分かるだろ?」
そう言うとカタカタと手は止まる事なくキーを叩き、あっという間にガラスの中の水が抜かれていく。あああああ、死んじゃったらどうするんだろう。
「水は抜いた、これからガラス開けるから拾ってやってくれ」
エリオットさんがぶっきらぼうに言うと、ガキンッという音と共に円筒が半円筒に二分割されて動き始めた。
「わわわわわっ」
真っ二つに割れたガラスからぐたりと金髪の女性が崩れ落ちてくる。慌てて抱きとめると、先程まで入っていた液体の臭いがこびりついているのだろう、薬の臭いが鼻を強く刺激した。
こうして見るとまるで人形のような、非の打ち所の無い美しさの女性である。見た目で判断するならばヒトで言う十代後半くらいの顔立ち。姉と同い年くらいだろうか。
だけど私は彼女を抱きかかえながら、先程精霊が言っていたように『殺さなくてはいけない』ような気持ちが芽生えていた。精霊に操られた時のような強迫めいたものとは違う、何となくこの女性に違和感があるというだけの話なのだが……
「いやしかし本当に美人だなー」
機械から離れてエリオットさんがやってきた。
「見ちゃダメです!!! あっち行ってください!!!!」
「お、お前はいいのかよ!!」
私は槍を巻いていた布で彼女を包んでひとまず、床に寝かせる。エリオットさんは他の機械に手がかりが無いか色々操作して調べているようだった。
ここまで来て収穫が謎の女性一人、というのはあまりにも辛い。しかも姉との対抗手段であるはずの槍は言う事を急に聞かなくなったときた。これではむしろマイナスだ。
女性はどう考えても研究者側というよりは実験体のような扱いだったはずだし、情報を持っているとは到底思えない。更に置き去りにされていたという事は、その実験にすらもう必要無くなったという事か……
「だめだな、めぼしい情報はもう消されてる」
お手上げ、っと両手の平を上げて首を振るエリオットさん。
「取られたくない情報だけ消して、この研究施設は捨て置いたんですかね」
「かもなー」
また振り出し。
あまりの事の進まなさに脱力してしまう。そこへ一つの高い音が響いた。
「ん……」
甘くて、それでいて澄んだ鈴の音のような声。勿論、私でもエリオットさんでもない。
「気がついたのか!」
エリオットさんが寝かせていた女性に駆け寄ってくる。
「布めくっちゃダメですからね」
釘を刺して、女性が私達に気付くのを待つ。
彼女は寝返りを打ってまた寝そうな素振りを見せたものの、床の硬さに完全に目を覚ましたようだ。むくりと起き上がると、あ、掛けていた布がはらりと落ちて両胸が露になってしまった。
「あれ?」
まだ寝ぼけた様子で、周囲を見渡して状況を把握しようとしている。
そこで私とエリオットさんとも目が合い、ようやく話が出来そうになった。
「おはようございます、具合は大丈夫ですか?」
私が先に声をかけると、彼女はとびきりの笑顔で応えてくれた。
「はい、大丈夫ですっ」
うーん、これは確かに可愛い。流石の私もドキドキしてしまう……ハッ! エリオットさんは大丈夫か!? ちらりと横目に彼を確認すると、
「…………」
大丈夫じゃないようだった。無言で、舐め回すように目の前の女性を凝視しているではないか。私は即座に横からグーでパンチを当ててやった。どがしゃああ!!という色々崩れた音と共にエリオットさんが吹っ飛ぶ。あ、そういえば私はまだ変身したままでしたね。
「な、何するんだよ!! 彼女も驚いてるだろーが!!」
「驚かせて申し訳ありません、布を巻きなおしたほうがいいと思いますよ」
何やら叫んでいる緑アタマは無視して、何事かと目を丸くしている金髪美女に促す。
彼女は何の事を言われているのか分からない、と言った顔で首を傾げ……
「えっ、あっ、キャアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
全力の金切り声で悲鳴を上げた。
とはいえ聞いていた話とは違う。大剣以外の武器は持ち主に従順では無かったのか?
「精霊さんはこの女性を殺せばいいと言っていましたが……」
「理由も無しに美人を殺せというのはどうなんだ?」
「美人に限りませんよ、そこは」
精霊にもう一度問いかけてみるのが早いのだろうが、また操られてしまっても困る。どうしたらいいものか悩んでいると、
「って何やってるんですか!!」
エリオットさんが円筒型のガラスに繋がっている機械をいじり始めていた。
「出して話してみれば殺すべきか分かるだろ?」
そう言うとカタカタと手は止まる事なくキーを叩き、あっという間にガラスの中の水が抜かれていく。あああああ、死んじゃったらどうするんだろう。
「水は抜いた、これからガラス開けるから拾ってやってくれ」
エリオットさんがぶっきらぼうに言うと、ガキンッという音と共に円筒が半円筒に二分割されて動き始めた。
「わわわわわっ」
真っ二つに割れたガラスからぐたりと金髪の女性が崩れ落ちてくる。慌てて抱きとめると、先程まで入っていた液体の臭いがこびりついているのだろう、薬の臭いが鼻を強く刺激した。
こうして見るとまるで人形のような、非の打ち所の無い美しさの女性である。見た目で判断するならばヒトで言う十代後半くらいの顔立ち。姉と同い年くらいだろうか。
だけど私は彼女を抱きかかえながら、先程精霊が言っていたように『殺さなくてはいけない』ような気持ちが芽生えていた。精霊に操られた時のような強迫めいたものとは違う、何となくこの女性に違和感があるというだけの話なのだが……
「いやしかし本当に美人だなー」
機械から離れてエリオットさんがやってきた。
「見ちゃダメです!!! あっち行ってください!!!!」
「お、お前はいいのかよ!!」
私は槍を巻いていた布で彼女を包んでひとまず、床に寝かせる。エリオットさんは他の機械に手がかりが無いか色々操作して調べているようだった。
ここまで来て収穫が謎の女性一人、というのはあまりにも辛い。しかも姉との対抗手段であるはずの槍は言う事を急に聞かなくなったときた。これではむしろマイナスだ。
女性はどう考えても研究者側というよりは実験体のような扱いだったはずだし、情報を持っているとは到底思えない。更に置き去りにされていたという事は、その実験にすらもう必要無くなったという事か……
「だめだな、めぼしい情報はもう消されてる」
お手上げ、っと両手の平を上げて首を振るエリオットさん。
「取られたくない情報だけ消して、この研究施設は捨て置いたんですかね」
「かもなー」
また振り出し。
あまりの事の進まなさに脱力してしまう。そこへ一つの高い音が響いた。
「ん……」
甘くて、それでいて澄んだ鈴の音のような声。勿論、私でもエリオットさんでもない。
「気がついたのか!」
エリオットさんが寝かせていた女性に駆け寄ってくる。
「布めくっちゃダメですからね」
釘を刺して、女性が私達に気付くのを待つ。
彼女は寝返りを打ってまた寝そうな素振りを見せたものの、床の硬さに完全に目を覚ましたようだ。むくりと起き上がると、あ、掛けていた布がはらりと落ちて両胸が露になってしまった。
「あれ?」
まだ寝ぼけた様子で、周囲を見渡して状況を把握しようとしている。
そこで私とエリオットさんとも目が合い、ようやく話が出来そうになった。
「おはようございます、具合は大丈夫ですか?」
私が先に声をかけると、彼女はとびきりの笑顔で応えてくれた。
「はい、大丈夫ですっ」
うーん、これは確かに可愛い。流石の私もドキドキしてしまう……ハッ! エリオットさんは大丈夫か!? ちらりと横目に彼を確認すると、
「…………」
大丈夫じゃないようだった。無言で、舐め回すように目の前の女性を凝視しているではないか。私は即座に横からグーでパンチを当ててやった。どがしゃああ!!という色々崩れた音と共にエリオットさんが吹っ飛ぶ。あ、そういえば私はまだ変身したままでしたね。
「な、何するんだよ!! 彼女も驚いてるだろーが!!」
「驚かせて申し訳ありません、布を巻きなおしたほうがいいと思いますよ」
何やら叫んでいる緑アタマは無視して、何事かと目を丸くしている金髪美女に促す。
彼女は何の事を言われているのか分からない、と言った顔で首を傾げ……
「えっ、あっ、キャアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
全力の金切り声で悲鳴を上げた。
更新日:2011-06-20 18:26:32