- 167 / 565 ページ
【↑フォウも描く予定でしたが、位置にもっと距離があるため入りませんでしたえへへ】
「一応聞くが……剥離させた二体の精霊ってのはどうなってるんだ? 言ってた、って事は会話が出来る状態で居るんだろ?」
「ねずみの中に入れたよ」
「ぶはっ」
何してやがるんだ。想定外の返答に吹き出さずには居られなかった。右手の甲で口元を拭うと、唾だけでなく血でも手の甲が汚れる。が、後で治せばいいだけの怪我には構わず会話の先を急ぐ俺。
「もう一つ聞くが、その精霊の口調とかそういうの分かるか?」
不安定な二体と、感じ取る事すら出来ない残りの一体。俺は少なくとも前者の二体には心当たりがあった。
「口調? うーん……一人はぶっきら棒な感じで、もう一人は無邪気って言うか子供って言うか、そんな感じ。ぶっきら棒な方はライト先生と面識があったみたいだよ」
「アイツら、クリスの中に居たのか……」
武具が折れる事で居場所が無くなったのだろうか。どうして入っていたのかはともかく、それに気付いて取り出そうとするライトの行動力には恐れ入る。いや、知識欲の塊のようなライトの事だ、ただ単にやりたかっただけかも知れない。
「気付いてなかったって事は、王子様が言ってる精霊と今回剥離させた精霊は別物?」
「あぁそうだな。俺がやろうとしているのはソッチじゃなくてもっと昔からクリスの中に居る方」
「昔から……」
そう、少なくともローズがクリスと一緒に居た頃から居るはずだ。それより後だとすると彼女が知る機会は無いのだから。
「今俺はそれを解除する為に行動している。だからぶっちゃけるとそれが終わるまではクリスを適当な理由で傍に置いておきたかったんだ」
けれど、それは周囲からはあまり良く見られなかったんだろうな。レイアも、ライトも、そしてフォウも、世間ですらも。年端も行かないガキを危険な場所へ連れ歩く俺の姿は異質なものだったのだろう。飛び交う噂がそれを物語っている。
フォウは少し困ったような顔をして俺から目を逸らすと、
「性格いいのか悪いのか、どっちかにしてよ……」
ぼそりとよく分からん事を呟いた。
「この俺が性格悪いわけが無いだろ?」
「昼間っからサボってイチャコラして、お姉さん泣かせてたような人がよく言うねぇ!?」
突然激しく捲くし立てるフォウに少しビビって俺は後ずさる。それに、その言葉の中に含まれる事柄にも少し驚いて。
「……泣いてたか」
「うん、部屋出て行く時に少し見えた」
……流石にクラッサが相手じゃショックも大きかったのかも知れない。悪い事をしたなぁとも思うがそれ以上に、泣くくらいならもう少し別の怒り方があるだろうに、と不器用過ぎる幼馴染に不満が湧き出た。
「大人しく身を固めればいいだけなのに。自分の立場くらい考えたら?」
「言ってくれるじゃねえかこのクソガキが」
不機嫌になってきたところにカチンとくる台詞。俺はゆらりと立ち上がって部屋の外のルドラの青年を睨む。
フォウも、文句でもあるのかと言わんばかりに立って俺の視線を真っ向から受け止めていた。今にでもお互いに掴み掛かる寸前の空気になっていたところへ、階段の方から上って来る足音が聞こえて俺は書室から顔を出してそちらを見る。
「……遅かったじゃないか」
そこにはクリスがレイアをおぶって来ていた。
「レイアさん、説得しても辞めるって聞かないから気絶させて連れてきちゃいました」
「相変わらず思い切りがいいね、クリス……」
思い切りがいい、と言うよりは無茶をやりおる、と俺なら言いたい。准将を気絶させて運ぶとか恐ろしくて普通はやらん。
クリスは俺の方に寄ってきて、背負っているレイアを向ける。
「早く持ってください。命令通り止めましたけど、ここからはエリオットさんのお仕事でしょう」
伸びているレイアを受け取って書室の外に出ると、俺はポケットの中から鍵である魔法石を扉の隣にある装置に押し当てた。自動的に扉は閉まり、機密書室は密室空間となる。
ちなみに閉めている状態で中に人が居ると、書室の内部は自動的に燃える仕組みになっている為、間違って人が残っているのに閉めてしまうなんて事態が起こらない為にも入室管理が厳しいのだ。
「他に何か話す事はあるのか?」
「無いよ。お仕事頑張って」
フォウは本当にクリスの事を聞くだけの為に来たらしい。頑張れと言われてもてめえのせいでバレたんだよ、と思うと素直に受け取れなかった。そして、
「えっ、お話終わっちゃったんですか!?」
話題の中心であったはずの当人だけが……今も何も知らない。
「一応聞くが……剥離させた二体の精霊ってのはどうなってるんだ? 言ってた、って事は会話が出来る状態で居るんだろ?」
「ねずみの中に入れたよ」
「ぶはっ」
何してやがるんだ。想定外の返答に吹き出さずには居られなかった。右手の甲で口元を拭うと、唾だけでなく血でも手の甲が汚れる。が、後で治せばいいだけの怪我には構わず会話の先を急ぐ俺。
「もう一つ聞くが、その精霊の口調とかそういうの分かるか?」
不安定な二体と、感じ取る事すら出来ない残りの一体。俺は少なくとも前者の二体には心当たりがあった。
「口調? うーん……一人はぶっきら棒な感じで、もう一人は無邪気って言うか子供って言うか、そんな感じ。ぶっきら棒な方はライト先生と面識があったみたいだよ」
「アイツら、クリスの中に居たのか……」
武具が折れる事で居場所が無くなったのだろうか。どうして入っていたのかはともかく、それに気付いて取り出そうとするライトの行動力には恐れ入る。いや、知識欲の塊のようなライトの事だ、ただ単にやりたかっただけかも知れない。
「気付いてなかったって事は、王子様が言ってる精霊と今回剥離させた精霊は別物?」
「あぁそうだな。俺がやろうとしているのはソッチじゃなくてもっと昔からクリスの中に居る方」
「昔から……」
そう、少なくともローズがクリスと一緒に居た頃から居るはずだ。それより後だとすると彼女が知る機会は無いのだから。
「今俺はそれを解除する為に行動している。だからぶっちゃけるとそれが終わるまではクリスを適当な理由で傍に置いておきたかったんだ」
けれど、それは周囲からはあまり良く見られなかったんだろうな。レイアも、ライトも、そしてフォウも、世間ですらも。年端も行かないガキを危険な場所へ連れ歩く俺の姿は異質なものだったのだろう。飛び交う噂がそれを物語っている。
フォウは少し困ったような顔をして俺から目を逸らすと、
「性格いいのか悪いのか、どっちかにしてよ……」
ぼそりとよく分からん事を呟いた。
「この俺が性格悪いわけが無いだろ?」
「昼間っからサボってイチャコラして、お姉さん泣かせてたような人がよく言うねぇ!?」
突然激しく捲くし立てるフォウに少しビビって俺は後ずさる。それに、その言葉の中に含まれる事柄にも少し驚いて。
「……泣いてたか」
「うん、部屋出て行く時に少し見えた」
……流石にクラッサが相手じゃショックも大きかったのかも知れない。悪い事をしたなぁとも思うがそれ以上に、泣くくらいならもう少し別の怒り方があるだろうに、と不器用過ぎる幼馴染に不満が湧き出た。
「大人しく身を固めればいいだけなのに。自分の立場くらい考えたら?」
「言ってくれるじゃねえかこのクソガキが」
不機嫌になってきたところにカチンとくる台詞。俺はゆらりと立ち上がって部屋の外のルドラの青年を睨む。
フォウも、文句でもあるのかと言わんばかりに立って俺の視線を真っ向から受け止めていた。今にでもお互いに掴み掛かる寸前の空気になっていたところへ、階段の方から上って来る足音が聞こえて俺は書室から顔を出してそちらを見る。
「……遅かったじゃないか」
そこにはクリスがレイアをおぶって来ていた。
「レイアさん、説得しても辞めるって聞かないから気絶させて連れてきちゃいました」
「相変わらず思い切りがいいね、クリス……」
思い切りがいい、と言うよりは無茶をやりおる、と俺なら言いたい。准将を気絶させて運ぶとか恐ろしくて普通はやらん。
クリスは俺の方に寄ってきて、背負っているレイアを向ける。
「早く持ってください。命令通り止めましたけど、ここからはエリオットさんのお仕事でしょう」
伸びているレイアを受け取って書室の外に出ると、俺はポケットの中から鍵である魔法石を扉の隣にある装置に押し当てた。自動的に扉は閉まり、機密書室は密室空間となる。
ちなみに閉めている状態で中に人が居ると、書室の内部は自動的に燃える仕組みになっている為、間違って人が残っているのに閉めてしまうなんて事態が起こらない為にも入室管理が厳しいのだ。
「他に何か話す事はあるのか?」
「無いよ。お仕事頑張って」
フォウは本当にクリスの事を聞くだけの為に来たらしい。頑張れと言われてもてめえのせいでバレたんだよ、と思うと素直に受け取れなかった。そして、
「えっ、お話終わっちゃったんですか!?」
話題の中心であったはずの当人だけが……今も何も知らない。
更新日:2012-10-02 09:33:17