- 15 / 565 ページ
青い光が視界の全てを埋め尽くし終わる。
目をやっと開けるようになり、辺りを見渡すとそこは見覚えの無い景色に変わっていた。そう、一面が砂。星屑のような形をした小石が混じった綺麗な乾いた砂が、地平線どこまでも続いている。
ふと見ると手元には先程強い力を放っていた槍があった。今は先程とは違い、触っても何もならない。こうして見ると出来の良いただの槍でしかない。
エリオットさんもすぐ近くに既に立っていて、服についた砂をうざったるそうに払っていた。先程の銀色の髪の青年は……居ない。
「ここは……」
「アガム砂漠だな」
この砂漠独特の星屑の砂。実際に星屑なわけではなく、チクチクと尖ったように削れた、星に似た小さな石で出来た砂が特徴である。ちなみに裸足で歩くと痛い。
私は元々この砂漠の南西にある街の出なのでこの暑さには慣れているが、偉い人と発覚したエリオットさんは既に暑さでかなり参っているようだった。表情が既に死にそうになっている。
「流石にどのあたりか全く検討がつきませんね」
私も変化を解いて槍を杖がわりに起き上がると、砂を払い空を見上げた。雨なんて当分降りそうにない乾いた空。どうやらセオリーは魔術を使って私達をここまで飛ばしたらしい。
「物質どころか生物を空間転移させるとか、規格外だぞあの男……」
エリオットさんは暑さに唸りながらぼやく。残念ながらエリオットさんはセオリーと同じ事は出来ないようだ。という事は、
「自力でこの砂漠抜けなきゃいけないんですね……」
ちなみに、食料は少しあるけれど水なんて蓄えていない。先程まで旅をしてきていたのが山脈沿いだった為、その場その場で補給が出来たからである。
普通に砂漠を抜けるとするならば、非常にまずい状況。
私は街を出る時に持ってきていたローブを捨ててなかったので荷物から取り出し、まずは被って日差しを凌いだ。エリオットさんはそんな物を流石に用意してはいないので、高そうなマントを仕方なしに破って上から被る。あーあーあー勿体無い。
とりあえず途方もなく歩き始めながら、私は疑問をエリオットさんに投げ掛けた。
「私達は飛ばされたけれど、あの突然現れた男性は来ませんでしたね」
そう、あの状況下ならば彼も一緒に飛ばされてもおかしくないはずなのに。問いかけをしたものの、さくっさくっ、と砂が噛む音だけが耳に残り、エリオットさんの返答は無い。難しい顔をして口を尖らせながら、進行方向を見ているんだかいないんだか。この人、考えると返事が出来ないタチなのだろうか。
「エリオットさん?」
再度問いかけると、分かってるよと言ったような苛々した顔を向けられ、やっと彼は口を開いた。
「いや、憑いて来てるんじゃないか?」
「ついて?」
「あぁ、憑いて」
何となく声では意思の疎通が出来ていない気もする。疑問がまだ残っている私に対し、仕方ない、と言葉を続けるエリオットさん。
「普通に考えてみろ、そもそもアレは何だ」
「どれですか?」
「あの男だ」
「何って……」
あの人の声は……いつから、どこから、聞こえていた?
更新日:2011-06-20 17:47:07