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ルフィーナさんは顔色を変えずに聞いていた。私も詳しく聞くのは初めてで、この前は軽く言われただけなのでもやもやしていたものが随分晴れる。エリオットさんは喋り終えた後に少し冷めた紅茶を口につけ、それによってその薄い唇にほんのり色が戻るが目は普段よりも何だか怖かった。
「これに懲りたら、大人しく家に帰る事ね」
エリオットさんは返事をしない。ルフィーナさんもその長い耳を弄りながら、それ以上は深く突っ込まなかった。
しかしこれでは収穫が無いように見える。私には入り込めない二人の雰囲気がイヤで、仕方なく私から話を切り出す事にした。
「結局、治す術は無いのでしょうか?」
「あるわよ」
あっさりと言われた。
「エリ君が家に帰れば何だってどうにかなるでしょうね。まぁ私にはどうしようも無いけど」
「ルフィーナに出来ない事が他でどうにかなるとは思えないがな」
ルフィーナさんの言葉にエリオットさんが不満そうに突っ込む。ルフィーナさんは一瞬顔を曇らせたがすぐに笑顔に変え、
「随分あたしの事を評価してくれてるのね、先生冥利に尽きるわ」
……とイイ方に受け取ったようだった。
「それならエリオットさんの家に行った方が早いんじゃないですか?」
私はとっくに空にしてある紅茶の器をいじりながらもっともな事を聞いてみた。しかしエリオットさんは何故か知らないが、本日最高に不機嫌な顔をしていた。まぁ盗人なんてやっているのであれば家にはあまり帰りたくないのかも知れない。
「その様子だと、何も聞いてないのね」
ルフィーナさんは悪戯な表情を浮かべ、その眠そうな目を更に薄くしてこちらを見てくる。
「ル フ ィ ー ナ !」
「バレるよりは、自分で言った方が良いわよ何事も」
声を荒げるエリオットさんを澄まして宥める彼女は、再び私の方に向き直り、
「どういう紹介をされたのかは知らないけど、嘘に付き合ってあげて頂戴ね」
まるで母親のような優しい声で言った。
「エリオットさんは見るからに嘘吐きなんで気にしてませんよ」
私はその優しさに打たれ、笑顔でフォローを入れる。
「お前それフォローになってねぇよ」
嘘吐きが何かぶつぶつ言っているが、これも気にしないでおこう。ムスッと腕と足を組み、ふてぶてしい態度でエリオットさんはまた無言になる。大人気ないなぁこの人は。
そんなやり取りに笑みを零し、紅瞳のエルフの女性は最後に一つ助言をしてくれた。
「まぁ、自分でどうにかしたいならその剣があった場所にもう一度行く事ね。全てはまず始まりから調べなさい」
なるほど、それもそうだ。でも、もう一つアテがあるような事をエリオットさんは言っていたがそちらはいいのだろうか。しかしあっさりとエリオットさんは受け入れる。
「あぁ、わかった。行ってみるよ」
「え、本当ですか?」
「また来た道を戻るハメになるがまぁ我慢しろ」
子供じゃないんだから、それくらい分かってるのに!
私は少しふてくされたが、「またね」と手を振るルフィーナさんの笑顔に釣られ、不満を残さず図書館を後にした。
しかし、エリオットさんの態度は偽物だったらしい。素直に受け止めた私が馬鹿みたいではないか。その後のエリオットさんの言葉を聞き、私は大人って怖いなぁとしみじみ思う事になる。
「あの女、何か隠してるぜ」
まだ癒えていない傷を撫でながら、エリオットさんは宙に向かって毒を吐いた。
「これに懲りたら、大人しく家に帰る事ね」
エリオットさんは返事をしない。ルフィーナさんもその長い耳を弄りながら、それ以上は深く突っ込まなかった。
しかしこれでは収穫が無いように見える。私には入り込めない二人の雰囲気がイヤで、仕方なく私から話を切り出す事にした。
「結局、治す術は無いのでしょうか?」
「あるわよ」
あっさりと言われた。
「エリ君が家に帰れば何だってどうにかなるでしょうね。まぁ私にはどうしようも無いけど」
「ルフィーナに出来ない事が他でどうにかなるとは思えないがな」
ルフィーナさんの言葉にエリオットさんが不満そうに突っ込む。ルフィーナさんは一瞬顔を曇らせたがすぐに笑顔に変え、
「随分あたしの事を評価してくれてるのね、先生冥利に尽きるわ」
……とイイ方に受け取ったようだった。
「それならエリオットさんの家に行った方が早いんじゃないですか?」
私はとっくに空にしてある紅茶の器をいじりながらもっともな事を聞いてみた。しかしエリオットさんは何故か知らないが、本日最高に不機嫌な顔をしていた。まぁ盗人なんてやっているのであれば家にはあまり帰りたくないのかも知れない。
「その様子だと、何も聞いてないのね」
ルフィーナさんは悪戯な表情を浮かべ、その眠そうな目を更に薄くしてこちらを見てくる。
「ル フ ィ ー ナ !」
「バレるよりは、自分で言った方が良いわよ何事も」
声を荒げるエリオットさんを澄まして宥める彼女は、再び私の方に向き直り、
「どういう紹介をされたのかは知らないけど、嘘に付き合ってあげて頂戴ね」
まるで母親のような優しい声で言った。
「エリオットさんは見るからに嘘吐きなんで気にしてませんよ」
私はその優しさに打たれ、笑顔でフォローを入れる。
「お前それフォローになってねぇよ」
嘘吐きが何かぶつぶつ言っているが、これも気にしないでおこう。ムスッと腕と足を組み、ふてぶてしい態度でエリオットさんはまた無言になる。大人気ないなぁこの人は。
そんなやり取りに笑みを零し、紅瞳のエルフの女性は最後に一つ助言をしてくれた。
「まぁ、自分でどうにかしたいならその剣があった場所にもう一度行く事ね。全てはまず始まりから調べなさい」
なるほど、それもそうだ。でも、もう一つアテがあるような事をエリオットさんは言っていたがそちらはいいのだろうか。しかしあっさりとエリオットさんは受け入れる。
「あぁ、わかった。行ってみるよ」
「え、本当ですか?」
「また来た道を戻るハメになるがまぁ我慢しろ」
子供じゃないんだから、それくらい分かってるのに!
私は少しふてくされたが、「またね」と手を振るルフィーナさんの笑顔に釣られ、不満を残さず図書館を後にした。
しかし、エリオットさんの態度は偽物だったらしい。素直に受け止めた私が馬鹿みたいではないか。その後のエリオットさんの言葉を聞き、私は大人って怖いなぁとしみじみ思う事になる。
「あの女、何か隠してるぜ」
まだ癒えていない傷を撫でながら、エリオットさんは宙に向かって毒を吐いた。
更新日:2011-06-20 17:31:22