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introduzione ~軽薄な彼の視点~

   ◇◇◇   ◇◇◇

 皮肉なもので、特に物欲無く育ってきた俺が初めて欲しいと思ったそれは、結局俺の手には留まらなかった。たった一つの我侭ですら適わない、その歯がゆさにどれだけ身悶えた事だろう。

 そして歳月がそれを諦めさせてくれた頃、今度は別に欲しいものが出来てしまう。しかしそれもまた手を伸ばす事ですら躊躇われるくらいの障害があった。今更変えようの無い過去が大きく、大きく、二人の邪魔をする。

 結局アイツ以外の他の誰をも愛さなかった、俺の愛した君は……
 未だにこの縄を解いてくれやしないんだ。




 俺は鈍感とは真逆だからな、お前の気持ちも自分の気持ちもよく分かっている。

 けれどまだお互いに吹っ切れてない、そうだろう。
 お前も俺も、同じ影背負って縛られたまま、何一つ解決していないんだ。まだこれからなんだよ俺達は。
 ほら、キリキリ歩け。

 まだもうしばらく、出会った頃のように皮肉でも言い合いながらな。

   ◇◇◇   ◇◇◇

更新日:2011-06-04 17:45:39

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