私は何も言えなくなって
またグラスに目を移した。
「でも、梓ちゃんには悪かったと思ってるから…
それは本当だから!」
最後の一言に早坂さんの気持ちが入っていた気がする。
それが全てなんだ。
私が知る事のできる全て。
『…気にしないで下さい』
祐ちゃんと来た時のあの早坂さんの表情を思い出せば
今私に言えないって言ったのも分かる気がした。
でもそれで納得がいくわけじゃない。
ただ…もう聞けなかった。
“早坂さんが言うべきことじゃない”
ということは
私が聞くべきことじゃない。
更新日:2011-02-21 05:37:47