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自分が異動するまでの間
私は毎日その事ばかりを考えていた。

でも思い出すだけでため息しか出てこない。

やっとここに馴染めたと思ったのになぁ。

なんで私が異動対象にならないといけないの…。

絶対何かの間違いだ、と
後で一人でもう一度異動辞令を見に行ってみたけれど
やっぱり私の名前で
まさか同姓同名がこの会社にいるとも思えなくて。

総務から営業。

憂鬱な気分は晴れない。

別に異動希望だってしてなかったのに。

そんな異動間近のある日
課長に呼び出された。

「せっかく仕事を覚えてくれた水瀬さんを出すのは
本当に惜しいんだけどね」

……絶対そう思ってない。

私は黙ったまま苦笑いを返す。

「で、今日は営業の…今度水瀬さんの上司になる相手と顔合わせしてもらおうと思って来てもらったんだ」

顔合わせ。

そう言われて急にドキドキしてきた。

異動が本当なのを実感したのはこの時だった。

更新日:2011-02-21 05:01:29

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