- 85 / 151 ページ
June Mon. 1500 Lady Iris
シュレのコンバーチブルは、海峡沿いを北へ向かっている
真夏の気配を感じさせる陽射しは熱いが、潮風が心地よい
リオカードは薄着であることも手伝って、開放的な気分になりつつあった
すでに第2Boazici大橋を過ぎ、市街地から30分ほども離れた
このまま行くと、近郊のリゾート地であるサルィエールSariyerに着きそうだ
「 昼飯は喰ったのか? リオカード‥‥ 」
シュレの問いかけがリオカードには聞こえなかったのか、ずっと海の方を見ている
で、シュレはピンときた
「 ‥‥おまえ 朝も食べて無いだろう? 」
リオカードの異常なくらいの小食に、シュレは気付いていた
出逢ってから今までの3日間で、リオカードが“食事らしい食事”をしているところを見たのは1度きり シュレが朝食に作ったピタサンドだけだ
1日1食か、それ以下 それも小鳥の餌程度の量しか口にしていないのは、解って居た
「 だって、胃洗浄のあとだし 」
リオカードは急に思いついたように言った
シュレは鼻先で笑う
「 じゃなくて 毎朝の食事 」
「 ‥‥‥‥ 」
少し考えてから、リオカードはしぶしぶ応える
「 ブランチ ‥‥です いつも 」
「 ディナーは? 」
言い終えないうちにたたみかけられる
リオカードは何か言おうとして口を開けかけたが、返す言葉が無い
シュレはため息をついた
「 まさか、拒食症って訳じゃないだろうな? 」
「 ‥‥今度は心理学の講義ですか? Professor 」
心外だとでも言いたそうな口ぶりに、シュレは手を伸ばしリオカードの頬を軽くつねった
「 小生意気なLover boy 正直に言えよ
1日1食も喰わないなんて、普通のメンタリティをもったヤツはしねーぜ? 」
「 ‥‥でしょうね 」
他人事のように言う
「 でもこの仕事してると、ある程度不規則になっちゃうのはしょうがないじゃん 」
「 おまえのは不摂生って言うんだ まったく、しょうがねーヤツだな(-"-) 」
シュレは呆れる前に、薄く腹が立つ
なんでこんなに“生命維持活動”に対して、無関心なんだこいつは?
リオカードはバレてしまっては仕方がない、と 言い訳を始める
「 作るのが面倒っていうか、作れないし‥‥ 独りで外食するのもケータリングも、ねぇ
でも一応 サプリメントと お水と 野菜ジュースくらいは摂るけど 」
シュレは聞いちゃ居ない
「 家政婦がいるだろうが
おまえん家の家政婦は旦那様Monsieurのメシも作らねーのか? 」
「 ‥‥頼めば作ってくれるでしょうけど
でもヘレーネは、エイジャリーナのために来てもらってるんだもの
彼女のお休み以外は家に居ませんよ 」
シュレには訳が解らない
「 どーゆー家なんだ?ザヴィニー家ってのは
当主が満足に飯も食えないで 」
「 ヘレーネが悪い訳じゃないし‥‥ 」
「 ばかたれ おまえの自己管理の話だろ? 彼女になんの責任がある 」
「 ‥‥そう、良かった 」
リオカードは本当に安心したように言った
シュレはやっぱり呆れる
「 じゃあおまえは、エイジャリーナの休み以外自宅に帰らないのか? 」
リオカードは返事に窮した
「 ‥‥そんなことないけど なるべく帰るようにはしてるよ 」
「 いつもどこにいるんだ? 」
「 ‥‥いつもじゃないけど、時々 ディルソンホテルかケヴァン、とか? 」
「 あんなに豪華な自宅があるのにホテル? 」
「 自宅じゃないもん‥‥居候だし、居辛いでしょ 」
シュレはますます訳が解らない こいつはマジでエキセントリック過ぎる
「 何時から、なんで喰わなくなったんだ? 」
「 よく憶えて無い、けど アゴ動かすのが億劫で‥‥ 」
「 バカか? てめー もっとマシな言い訳は無いのか? 」
「 だって‥‥ 」
シュレの想像するに、左腕の傷‥‥自傷癖と同じではないかと思う
自分などどうなってもいいと考えて、適当に扱っているのだろう
多分、恐ろしく自己評価が低いのだ
「 ‥‥解った 誰かが傍に居て面倒見てくれないと駄目なんだろう この、お坊っちゃんは(`´) 」
「 そういう訳じゃないけど‥‥ 」
シュレは深いため息をついた
「 リオカード 」
「 はい? 」
「 おまえさんは、休日で何も予定が無い時は、いったいどうしているのかな? 」
「 そうだね‥‥ 」
と、ちょっと考える振り
「 ぼんやりしてます ‥‥なんとなく 」
「 ひょっとして‥‥(^_^;)
一日中同じところに座ったっきり‥‥とか? 」
「 ‥‥いけない? 」
シュレは、ウィンカーを出して路肩に寄ると、道路わきの木陰に車を停める
平日の昼間故か一般の車通りは少なく、観光バスが目立っていた
「 ‥‥本当に摂食障害じゃ無いんだな? 」
真夏の気配を感じさせる陽射しは熱いが、潮風が心地よい
リオカードは薄着であることも手伝って、開放的な気分になりつつあった
すでに第2Boazici大橋を過ぎ、市街地から30分ほども離れた
このまま行くと、近郊のリゾート地であるサルィエールSariyerに着きそうだ
「 昼飯は喰ったのか? リオカード‥‥ 」
シュレの問いかけがリオカードには聞こえなかったのか、ずっと海の方を見ている
で、シュレはピンときた
「 ‥‥おまえ 朝も食べて無いだろう? 」
リオカードの異常なくらいの小食に、シュレは気付いていた
出逢ってから今までの3日間で、リオカードが“食事らしい食事”をしているところを見たのは1度きり シュレが朝食に作ったピタサンドだけだ
1日1食か、それ以下 それも小鳥の餌程度の量しか口にしていないのは、解って居た
「 だって、胃洗浄のあとだし 」
リオカードは急に思いついたように言った
シュレは鼻先で笑う
「 じゃなくて 毎朝の食事 」
「 ‥‥‥‥ 」
少し考えてから、リオカードはしぶしぶ応える
「 ブランチ ‥‥です いつも 」
「 ディナーは? 」
言い終えないうちにたたみかけられる
リオカードは何か言おうとして口を開けかけたが、返す言葉が無い
シュレはため息をついた
「 まさか、拒食症って訳じゃないだろうな? 」
「 ‥‥今度は心理学の講義ですか? Professor 」
心外だとでも言いたそうな口ぶりに、シュレは手を伸ばしリオカードの頬を軽くつねった
「 小生意気なLover boy 正直に言えよ
1日1食も喰わないなんて、普通のメンタリティをもったヤツはしねーぜ? 」
「 ‥‥でしょうね 」
他人事のように言う
「 でもこの仕事してると、ある程度不規則になっちゃうのはしょうがないじゃん 」
「 おまえのは不摂生って言うんだ まったく、しょうがねーヤツだな(-"-) 」
シュレは呆れる前に、薄く腹が立つ
なんでこんなに“生命維持活動”に対して、無関心なんだこいつは?
リオカードはバレてしまっては仕方がない、と 言い訳を始める
「 作るのが面倒っていうか、作れないし‥‥ 独りで外食するのもケータリングも、ねぇ
でも一応 サプリメントと お水と 野菜ジュースくらいは摂るけど 」
シュレは聞いちゃ居ない
「 家政婦がいるだろうが
おまえん家の家政婦は旦那様Monsieurのメシも作らねーのか? 」
「 ‥‥頼めば作ってくれるでしょうけど
でもヘレーネは、エイジャリーナのために来てもらってるんだもの
彼女のお休み以外は家に居ませんよ 」
シュレには訳が解らない
「 どーゆー家なんだ?ザヴィニー家ってのは
当主が満足に飯も食えないで 」
「 ヘレーネが悪い訳じゃないし‥‥ 」
「 ばかたれ おまえの自己管理の話だろ? 彼女になんの責任がある 」
「 ‥‥そう、良かった 」
リオカードは本当に安心したように言った
シュレはやっぱり呆れる
「 じゃあおまえは、エイジャリーナの休み以外自宅に帰らないのか? 」
リオカードは返事に窮した
「 ‥‥そんなことないけど なるべく帰るようにはしてるよ 」
「 いつもどこにいるんだ? 」
「 ‥‥いつもじゃないけど、時々 ディルソンホテルかケヴァン、とか? 」
「 あんなに豪華な自宅があるのにホテル? 」
「 自宅じゃないもん‥‥居候だし、居辛いでしょ 」
シュレはますます訳が解らない こいつはマジでエキセントリック過ぎる
「 何時から、なんで喰わなくなったんだ? 」
「 よく憶えて無い、けど アゴ動かすのが億劫で‥‥ 」
「 バカか? てめー もっとマシな言い訳は無いのか? 」
「 だって‥‥ 」
シュレの想像するに、左腕の傷‥‥自傷癖と同じではないかと思う
自分などどうなってもいいと考えて、適当に扱っているのだろう
多分、恐ろしく自己評価が低いのだ
「 ‥‥解った 誰かが傍に居て面倒見てくれないと駄目なんだろう この、お坊っちゃんは(`´) 」
「 そういう訳じゃないけど‥‥ 」
シュレは深いため息をついた
「 リオカード 」
「 はい? 」
「 おまえさんは、休日で何も予定が無い時は、いったいどうしているのかな? 」
「 そうだね‥‥ 」
と、ちょっと考える振り
「 ぼんやりしてます ‥‥なんとなく 」
「 ひょっとして‥‥(^_^;)
一日中同じところに座ったっきり‥‥とか? 」
「 ‥‥いけない? 」
シュレは、ウィンカーを出して路肩に寄ると、道路わきの木陰に車を停める
平日の昼間故か一般の車通りは少なく、観光バスが目立っていた
「 ‥‥本当に摂食障害じゃ無いんだな? 」
更新日:2011-05-04 15:06:30