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June Sun. 1800

 シュレのインカムから、ガイル・マキの呼ぶ声がする
 「 どうしたって? 」
シュレは何かに頷くと、上階を指した
 「 なにかあったの? 」
 「 カメラ、だ 」
この邸の随所に仕掛けられた、防犯用ではなさそうな監視カメラの件だった
 2階へ、なだらかな螺旋階段を上る 幅が狭いせいか、シュレはリオカードを先に行かせる
紳士のたしなみLadyfirstという訳でもないが(落ちた時支えられるようにね)
別に意図した訳ではなかったが、眼の前にリオカードのすんなりと伸びた脚線美があって、シュレはにんまり‥‥
 「 実際、役得だな 」
 「 はい? 」
左膝の脇に小さな傷が見えて、シュレは思わず手をだした
 リオカードは階段を踏み外しそうになり、手すりに縋る
 「 な に? (@_@;) 」
 「 血が出てる 」
シュレは他意無く言ったが‥‥
その時リオカードは自分の両脚を改めて見て、すごい恰好をしているかも?と気付く
タイトスカートをセンタースリットから裂いて太腿の下でミニ丈に結んで、ガーターベルトまで見えている
あわてて結び目を解き丈を下げて見たものの、裂いてしまったスリットは元に戻らない
 シュレはリオカードの戸惑いを、ふと笑う 人が悪そうに言う
 「 ‥‥おそろしく扇情的な恰好だよ、な 」
 「 だ‥‥って 」
リオカードは頬に血の気を上らせて、口唇を噛んだ
 「 しょうがないじゃない 走れなかったんだから‥‥ 」
 「 しょうがない、ねえ 」
シュレは嫌味に笑うと、掌で膝から上へなで上げる
リオカードは階段のデコラティヴな手すりに取りついたまま、声も出せない
 「 ‥‥おまえは本当にからかい甲斐があるぜ、リオカード 」
 「 ‥‥‥‥ 」
口惜しいが返す言葉が無い
シュレはそのまま掌で太ももからヒップラインをなぞり、腰を抱きよせる
 「 すごく楽しめる性格だな 可愛いよ♪ 」
 「 か‥‥可愛くなんか‥‥ 」
小さな口唇を薄く開いたまま、絶句する
シュレはその口唇に自分の口唇を押しつけた
 びくん‥‥として体を引こうとしたリオカードだが、しっかり抱きしめられているので身動きがとれない
それでかなりの逃げ腰で口づけを受けて居た
 ちょっと口唇を離して、シュレは笑う
 「 もういい加減で慣れろよ‥‥ 」
 「 ‥‥慣れる もんなの? 」
シュレは悪戯っ子っぽくウィンクした
 「 いくらかの経験と、多少の開き直りだな こ〜ゆ〜のは 」
 「 開き直り、ね 」
シュレが1段下に居るせいで、眼の高さが同じくらいになる
リオカードはシュレの金茶の瞳を、間近に見詰め返しながら言った
 「 ‥‥でも ぼくは最初から違和感とか、倒錯してるとか感じて無い気がするよ
そういうのは何て言うの? 」
 「 素質って言うのと違うか? 」
 「 ゲイの? 」
問い返して、リオカードは小首を傾げた
その肩先を飾っていたほつれ髪がリオカードの動きにはらりと肩をはずれて、シュレの胸元に落ちて来た
開いた襟から肌をくすぐる
シュレはリオカードの首筋辺りに波打つ金髪を掴んで、意味深げな笑い方をすると、小さく言った
 「 確かめて、みるか? 」
リオカードは一瞬眼を見開いた
 「 確かめるって‥‥こんなところで? やだよ 人が居るじゃない 」
 「 人が居ない所ならいいのか? 」
多少意地悪く言ったシュレに、リオカードはあわてて首を否定に振った
 「 そういう意味じゃないってば
悪いけど、確かめる勇気なんか持ち合わせて無いよ、ぼくは 」
 「 だから そこで開き直りが肝心になって来るんだよ 解る? 」
 「 ああ‥‥なるほどね 」
言いくるめられて素直に納得して見せたリオカードに、シュレはまた笑った
 「 まったく‥‥おまえは可愛いヤツだよ リオカード 」
 「 ‥‥また、からかったね シニー 」
 「 今のは本気 一度是非“確かめさせて”もらいたいね 」
リオカードはシュレの真意を量りかねて、返事もできない
眉を少し寄せて、考え込む様子を見せる
 「 何を悩んでるんだ? 」
 「 大したことじゃないけど‥‥
ただぼくには素質なんか無いと思うな 」
シュレは少々呆れて、自分の腕が抱いているリオカードを見た
 「 これ、でか? 素質充分に見えるぜ、おまえさん 」
 シュレの言い分も、もっともだと思う
男の腕に抱かれ、しかもしっかり下心付きのキスまでされて、違和感が無いなんて言う男に、ゲイの素質が無いなどと
果たして信じられるだろうか
 けれど本人のリオカードにしてみれば、信じ得る事実なのだろう
憮然とした調子で言った

更新日:2011-05-13 21:59:46

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