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 リオカードは思わずシュレの顔を仰ぎ見る
シュレもリオカードの瞳を凝視する
 「 ‥‥フェイ‥‥フェイ・ジェジェ‥‥ 」
スタージェスは苦しげな息遣いで、誰かの名を呼んだ

 スタージェスが運ばれるストレッチャーを見送りながら、シュレは背中からリオカードの華奢な肢体を胸に抱きしめた
髪をなで、眼許に口づけする
それでリオカードはようやく、心配を掛けて居た事を悟った
運が悪ければ、ストレッチャーで運ばれるのはリオカードだったかもしれないのだ
 シュレは黙ったまま、リオカードのドレスウォッチ‥‥集音器のスイッチを切る
そしてリオカードの肩に手を掛け、視線の高さまで身をかがめると、その眼を間近に見詰めながら優しく諭すように言う
 「 ‥‥最初にスタージェスを逃がした段階で、おまえさんの役割は終わってる
いつまでも現況に居ちゃだめだろ? 」
 銃を持たないリオカードがそのまま現況に留まっては、彼のために誰かが救出に向かわなくてはならなくなる
戦力がそれだけ薄くなる
シュレの言った通り「上階に逃げ」なければいけなかったのだ、とリオカードは気付いた
 ようやく把握したらしい事を悟ると、シュレはため息をつく
 「 ほんっとに偶然、銃が手に入ったから良いようなものの
‥‥もともとおまえは丸腰なんだから
役目を終えたらさっさと刷けないと、みんなが困るだろう? 」
 「 うん‥‥そう、だね 」
 リオカードは他人からこんな風に優しく、だがきちんと「叱られた」事が今まで無かった
反抗期も無かったくらい大人しい子供だったためか、実は肉親からも叱られた記憶がほとんど無い
他人から心配され気遣われ‥‥親身になって諭して貰ったのは、憶えて居る限りこれが初めてかもしれない
しかも誰かに聞かれないように、集音器を切る心遣いまでして貰って
 なにか戸惑いながらも、胸の震えるような想いをしている
 「 ‥‥ありがとう シニー 」
何気なく言ったのに、口唇が震える
静かに微笑みながら真直ぐにシュレを見詰めた
素直で綺麗な視線に‥‥シュレはふと鼻白む
 「 解ればいいんだ 」
軽くウィンク(^_-)☆ リオカードの顎を支えると、そっと口づけした

更新日:2011-05-13 21:56:06

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