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そのガイルの頬に掻き傷がついているが、それは多分前室で仔犬puppyに引っ掻かれたのだろう
 オブザーヴァのボスと、秘書のMs.リリアナ
 そして、美人好きのTopSniper
持ち前の、シャープな切れ味の良さで“SOLINGEN”と呼ばれるシュレ・カナルソン
彼の目下の相棒“LORELEY”リオカードは医療部で休んでいた

 「 さて、リオカード以外は全員そろったな 」
 一渡り室内を見回して、ボスが言った
そして、シュレに顎をしゃくって見せる 
シュレはくつろいだ風にソファに掛けたまま、皆に視線を送る
 「 話は聞いただろうが、“ロッド・ジェイム”が“死んだ” 」
きっぱりと言い切る
一座の中からさしたる動揺は感じない
だが、彼らの心中に張り詰める揺るぎない1本の糸の存在を、シュレは充分に解っていた
 「 念のため概略を説明する
昨夜 2100 ジェイム別邸でのカジノに、“スルタン・ベイシェヒール”として出席
役割は、俺が情報収集 リオカードが眼眩まし 特にリオカードは、ジェイムの死んだ奥方に似ているってことで‥‥ 」
 「 質問 」
と、クレラのハスキーヴォイスがシュレの話を遮る
 「 奥方のことは初耳だわ いつ死んだの?
それにリオカードは似ているだけ? ジェイムの反応は? 」
矢継ぎ早の質問にシュレは平手を向ける
 「 奥方の名前は“フィーズベリ” 彼女に関しては、男爵の話を後で聞こう
リオカードは、あのジェイムが我を忘れる程良く似ていた、らしい 」
クレラがどうして、と尋ねる前に、シュレは苦笑しつつ付け足す
 「 長手袋をしたままのリオカードの手に、ジェイムがキスした それ以外にも、いろいろ‥‥ 」
皆とりあえず納得する
 「 順調に行ってたんだが、“フィーズベリ”にご執心のスタージェスとリオカードがカジノから抜け出した直後、ジェイムも席を立って姿を消した
2315 俺の携帯端末に、トレッキングしていたガイルから指示が入った 」
ふ と、眩しそうな目つきをする
 「 “Ladyを救出して退避 場所はジェイムの私室” で、向かって見ると ジェイムの私室で‥‥ 」
 「 ジェイムが死んでたのね 」
若干嬉しそうに、アブサディティが言った
 「 俺が見たのは、床に倒れているジェイムと、2人の男 1人は副社長のロビンソンだ
ジェイムが死んだかどうかは、確認していない
失神する前のリオカードが言うには、ブランデーに薬が仕込まれていたそうだ
ブランデー、ジェイムの血液、リオカードの血液サンプルは科研の分析結果を見てくれ 」
Ms.リリアナから皆に資料が渡される 皆、ざっと資料を繰る
 「 あ、あの‥‥ 」
その様子を見ていたナンネルが、口ごもりつつシュレに訊いた
 「 リオカードさんが‥‥ご自分から薬を飲んだって本当ですか? 」
半信半疑という口調
 「 ああ‥‥ 」
と、シュレ 思わずため息をついている
 「 “自分がサンプルになればいいと思った”そうだが?
‥‥もう、意識も戻ったし対処薬も解ってる 心配ねーよ 」
苦も無く言ってのけたシュレだが、そのポーカーフェイスがかえって心配を色濃いものにしている
シュレのさざ波立つ心を読み取れそうで、ふと不安になる人間も居た
 「 その辺はリオカードがそんな状態なんで、ガイルの話を聞かないと 」
シュレはガイルを顧みる ガイル・マキは肩を竦めた
 「 ジェイムはリオカードに“フィーズベリ”の話を、聞かせたかったようだな 」
シュレは頷いて補足する
 「 事実ジェイムの私室には、フィーズベリの肖像画があった 」
 「 まー あのおっさん けっこーロマンティストなのねぇ‥‥っと 」
つい思ったことを口走ったアブサディティは、皆の視線を受けて黙る
 「 ばか‥‥ 」
ジォイは思わず頭を抱えそーになった ガイルは構わず続ける
 「 ‥‥ジェイムは未完成の肖像画のモデルになれと言った が、“フィーズベリ”は応えなかった
リオカードはマティーニ、ジェイムはブランデーを飲って
“今日はフィーズベリの命日”そして“自分が殺した”と、言っていたな
そのほぼ直後、3分も経たないで倒れた 」
ガイルはそう言って腕組みする
 「 リオカードの見たところは、ショック状態による心停止か、心臓発作 脈も触れないし呼吸もしていない
現場はほぼ密室 幹部たちと鉢合せしたが退避出来る場所が無く、リオカードもブランデーを飲んで、すぐに倒れた 」
後はご覧の通り、とシュレに話の続きを振る
 「 ‥‥俺が駆け付けた時もう1人の男が、倒れた“フィーズベリ”をジェイムの私室に隠そうと、している感じだった 」
ガイルは視線を上げて、冷静に話すシュレの横顔を見た
皆、まさに間一髪だったのかと、ひんやりした心地がしている

更新日:2011-05-13 19:51:37

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