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シュレは了解した
エイジャリーナが殊更に、リオカードのドレスシャツを欲しがった理由を
「 子供の頃のようにいつも一緒には居られない
それは判っているんですの ただ‥‥ 兄はとても‥‥ 」
この年頃の少女にしては慎重すぎるほど、考え深く話す
「 わたくし、兄のお友達にお目にかかるのは初めてなので、少しはしゃいでしまって
失礼があったらお赦しくださいね‥‥ 」
「 いや? 別に‥‥ 」
エイジャリーナが何を言わんとしているのか、シュレは見当もつかない
「 ‥‥兄には、内気なところがあるでしょう
いつも独りで居る、印象が強いものですから
お友達がいらしてくださって、わたくしとても嬉しく思っています 」
「 内気‥‥? 」
まさか、とシュレは思う
昨夜からの行動を見る限り、活発とは言えないまでも内気とは思えない
エイジャリーナは困ったように続ける
「 社交的ではない、という事ではなくって‥‥
なんというか、ご自分だけの世界にいらっしゃる気がして‥‥ 」
「 ああ‥‥ 」
シュレはリオカードのデータを思い出していた
『対人恐怖症』とかなんとか
エイジャリーナに伝えてもいいものか、迷ったが ふとカマをかける気になる
左腕を指して訊いた
「 君がそう思うのは 傷痕の、せいか‥‥な? 」
さっと、エイジャリーナの顔に翳りが差す
少し離れたところに座っているヘレーネが、こちらを凝視しているのが感じ取れた
なるほど、とシュレは納得した
「 ‥‥ああ見えて結構、度胸のいいおにーさんで、ね 」
「 えっ‥‥? 」
エイジャリーナは意外な言葉に眼を見張る
「 思い切りもいいし、大胆なところもある
ただ、今はまだ経験値が低い ‥‥そのせいもあると思うね 」
あっさりと感想を伝える
「 そうなんですの? 」
説得力のあるシュレの言葉に、エイジャリーナは目を見張る
そして小首をかしげる
そのしぐさがまた、リオカードに良く似ていた
「 つまりまだ、ガキだってこと 」
きっぱり言ってシュレは、口の端で笑った そうして立ち上がる
「 部屋は‥‥? 」
唖然とした様子のエイジャリーナに代わって、ヘレーネが静かに動く
奥の扉を開けて、シュレを招いた
廊下の突き当たりにやや小さめな扉があった
シュレは軽くノックして、返事も待たずに部屋へ入る
そこはエントランス風の小間で、出窓と小さなテーブルがあり、花が飾られている
出窓の向こうに初夏の早緑と海峡が見えた
出窓を正面にして、右手に観音開きの大きな扉がある
その半開きになったデコラティヴな扉を、靴の先で蹴って開けた
天窓とバルコニーへのガラス扉が一体となった、広い窓
風の通る開放的な吹き抜け
格子に組まれたフレームの影が、たっぷりとしたロールスクリーンに重たげに揺れている
「 は‥‥ トラブルシューターらしくない部屋だ、な 」
籐家具とサンドベージュを基調にした、窓の広いリゾートホテルのような造りのせいか、だがリオカードらしい部屋だった
吹き抜けのドローイングルームに繊細な曲線を描く階段があり、空に近い中二階にベッドルームがあるらしかった
「 シニー‥‥ 」
階段を上がって来たシュレを、奥の壁一面に貼った鏡の中に見止めても、リオカードは驚きもしなかった
振り返りもせず、鏡の中のシュレにむかって、緩く笑みかける
鏡の壁のむこうにはウォークインクローゼットやドレッシングルームがあるらしく、リオカードは奥へ行って服を数着抱えて来た
それから着替えにかかる
かぎ裂きしたドレスシャツを脱ぎながらリオカードは、肩越しにシュレを顧みた
「 ‥‥なんだか、このシュチュエーション多くない? 」
「 いまさら照れなくても 」
シュレは中央に置かれた、広いベッドに寝転がった
ブロンズガラスの天窓から見る空は、セピア色をしている
「 ベッドに天蓋でもついてるかと思った 」
「 ‥‥実家のにはついてる、けど‥‥(^_^;) 」
「 実家? 」
リオカードは小首をかしげる 最前見たエイジャリーナと同じしぐさだ
「 ‥‥自宅‥‥ 」
「 自宅って? 」
えーと、と考え込む それに近い言葉を思いつけないらしい
急にEnglishに切り替えて話し出すので、シュレは一瞬面食らう
「 郊外にある、母と住んでた家
ここは義父の‥‥エイジャリーナの家なの だからぼくは居候 」
「 はぁ〜 」
シュレはちょっと脱力した こいつどんだけお坊ちゃんなんだ?
「 居候でこの部屋かょ‥‥(>_<) 」
「 言いたいことはわかるけど‥‥あとで聞かせて 」
「 俺はそんなに気長じゃあねぇぞ 」
「 ‥‥‥‥後ろの ボタンがかからないの‥‥かけてくださる? 」
エイジャリーナの口調をまねる
エイジャリーナが殊更に、リオカードのドレスシャツを欲しがった理由を
「 子供の頃のようにいつも一緒には居られない
それは判っているんですの ただ‥‥ 兄はとても‥‥ 」
この年頃の少女にしては慎重すぎるほど、考え深く話す
「 わたくし、兄のお友達にお目にかかるのは初めてなので、少しはしゃいでしまって
失礼があったらお赦しくださいね‥‥ 」
「 いや? 別に‥‥ 」
エイジャリーナが何を言わんとしているのか、シュレは見当もつかない
「 ‥‥兄には、内気なところがあるでしょう
いつも独りで居る、印象が強いものですから
お友達がいらしてくださって、わたくしとても嬉しく思っています 」
「 内気‥‥? 」
まさか、とシュレは思う
昨夜からの行動を見る限り、活発とは言えないまでも内気とは思えない
エイジャリーナは困ったように続ける
「 社交的ではない、という事ではなくって‥‥
なんというか、ご自分だけの世界にいらっしゃる気がして‥‥ 」
「 ああ‥‥ 」
シュレはリオカードのデータを思い出していた
『対人恐怖症』とかなんとか
エイジャリーナに伝えてもいいものか、迷ったが ふとカマをかける気になる
左腕を指して訊いた
「 君がそう思うのは 傷痕の、せいか‥‥な? 」
さっと、エイジャリーナの顔に翳りが差す
少し離れたところに座っているヘレーネが、こちらを凝視しているのが感じ取れた
なるほど、とシュレは納得した
「 ‥‥ああ見えて結構、度胸のいいおにーさんで、ね 」
「 えっ‥‥? 」
エイジャリーナは意外な言葉に眼を見張る
「 思い切りもいいし、大胆なところもある
ただ、今はまだ経験値が低い ‥‥そのせいもあると思うね 」
あっさりと感想を伝える
「 そうなんですの? 」
説得力のあるシュレの言葉に、エイジャリーナは目を見張る
そして小首をかしげる
そのしぐさがまた、リオカードに良く似ていた
「 つまりまだ、ガキだってこと 」
きっぱり言ってシュレは、口の端で笑った そうして立ち上がる
「 部屋は‥‥? 」
唖然とした様子のエイジャリーナに代わって、ヘレーネが静かに動く
奥の扉を開けて、シュレを招いた
廊下の突き当たりにやや小さめな扉があった
シュレは軽くノックして、返事も待たずに部屋へ入る
そこはエントランス風の小間で、出窓と小さなテーブルがあり、花が飾られている
出窓の向こうに初夏の早緑と海峡が見えた
出窓を正面にして、右手に観音開きの大きな扉がある
その半開きになったデコラティヴな扉を、靴の先で蹴って開けた
天窓とバルコニーへのガラス扉が一体となった、広い窓
風の通る開放的な吹き抜け
格子に組まれたフレームの影が、たっぷりとしたロールスクリーンに重たげに揺れている
「 は‥‥ トラブルシューターらしくない部屋だ、な 」
籐家具とサンドベージュを基調にした、窓の広いリゾートホテルのような造りのせいか、だがリオカードらしい部屋だった
吹き抜けのドローイングルームに繊細な曲線を描く階段があり、空に近い中二階にベッドルームがあるらしかった
「 シニー‥‥ 」
階段を上がって来たシュレを、奥の壁一面に貼った鏡の中に見止めても、リオカードは驚きもしなかった
振り返りもせず、鏡の中のシュレにむかって、緩く笑みかける
鏡の壁のむこうにはウォークインクローゼットやドレッシングルームがあるらしく、リオカードは奥へ行って服を数着抱えて来た
それから着替えにかかる
かぎ裂きしたドレスシャツを脱ぎながらリオカードは、肩越しにシュレを顧みた
「 ‥‥なんだか、このシュチュエーション多くない? 」
「 いまさら照れなくても 」
シュレは中央に置かれた、広いベッドに寝転がった
ブロンズガラスの天窓から見る空は、セピア色をしている
「 ベッドに天蓋でもついてるかと思った 」
「 ‥‥実家のにはついてる、けど‥‥(^_^;) 」
「 実家? 」
リオカードは小首をかしげる 最前見たエイジャリーナと同じしぐさだ
「 ‥‥自宅‥‥ 」
「 自宅って? 」
えーと、と考え込む それに近い言葉を思いつけないらしい
急にEnglishに切り替えて話し出すので、シュレは一瞬面食らう
「 郊外にある、母と住んでた家
ここは義父の‥‥エイジャリーナの家なの だからぼくは居候 」
「 はぁ〜 」
シュレはちょっと脱力した こいつどんだけお坊ちゃんなんだ?
「 居候でこの部屋かょ‥‥(>_<) 」
「 言いたいことはわかるけど‥‥あとで聞かせて 」
「 俺はそんなに気長じゃあねぇぞ 」
「 ‥‥‥‥後ろの ボタンがかからないの‥‥かけてくださる? 」
エイジャリーナの口調をまねる
更新日:2011-05-05 22:24:50