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プワゾン


「離婚しようと思うの」事も無げに沙耶は言った。

「えっ?」私は次に続く言葉を見つけられずに
ただ沙耶の昔と変わらず綺麗にメイクされた顔を見ていた。

5月の連休明け。久しぶりに会わない?
と携帯に電話をくれたのは、そのためだったの?

沙耶とは、中学からの付き合い。ずっと親友だった。

8年前に同級生だった達也と結婚して
今年、小学校に入学した美夏ちゃんも居るのに・・・。

「もう決めたことなの?」

「達也には、まだ言ってないわ」

「聴いてもいい?」

「なに?」

「離婚の原因は何なの?」

「・・・」

「美夏ちゃんは、どうするの?」

「原因は、あなたよ・・・」

「私・・・?」

「そうよ。達也はまだあなたを忘れてない・・・」

「ちょっと待ってよ。私、達也とは何もないわよ」

「ずっと、あなたを好きだったのよ・・・」

「中学時代の話でしょう?」

確かに、中学時代はクラス中の噂になっていた達也と私。
でも1度だってふたりで会ったこともないし
付き合ってたなんてまったくの嘘、作り話。

「達也と沙耶が、もしも上手くいってなかったとしても
それを私のせいにするなんて・・・。
誰か他に女の人が居るんじゃないの?」

「他に・・・?」

「達也とちゃんと話し合ってよ」

「うん、ごめん。そういえば・・・」

「なに?何かあるの?」

「帰りが遅い夜・・・いつもプワゾンの香りがするの」

「プワゾン?ディオールの香水の?」

「そう。あなたは・・・」

「私は、ニナ・リッチしか使わないわ」

「そうよね。レールデュタンよね。昔から・・・」

「疑いは晴れた?」

「ごめん。私どうかしてた・・・」

「いいのよ。気持ちは分かるから」

更新日:2011-02-17 21:12:51

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