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5 崑崙山

滝の音が徐々に強くなっている
歩く方向は解ったが、どこを歩いているのか解るほど、紅錦香はこの場所に慣れていない
・・・そういえば、滝自体が二つあったはず
あのような見事な滝が対にふたつも存在するのはなんとも不思議だ

「着きましたよ」
帝鴻が目隠しを外してくれた

「・・・・なんと・・・」
確かにそこは、先ほどと同じ桃園が広がっている
だが、まるで違う世界なのだということが、紅錦香にも解った。

「地面が・・・無いわ」
足もとの土が、無い
濃い霧のようなものが足元に広がり、まるで雪が積もったみたいだ。
白い地面で反射された草木はいっそうキラキラと輝き、大変美しかった。

なんとなく、目隠しを外した後も、帝鴻の手を繋いで歩いていた。

洗濯をするもの、機織をするもの
幾人かの男女に出会った。

「すべて”仙人”なのですよ」
不思議そうな顔をする紅錦香に帝鴻は言った
「・・・まるで、村みたい」
長閑で、豊かな村・・・そして、今まで見たどこよりも綺麗な場所だ

「そういう所ですね、それぞれに役目も与えられているし」
帝鴻は笑う、とても楽しそうだ。

更新日:2011-02-20 00:15:20

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