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17本目:娠霊写真

「娠霊写真って知ってる?」

「んー。心霊写真って幽霊が写ってる写真」

 スナック菓子を摘まみながら、由梨絵は健一の話を適当に聞いていた。

「ちがう。妊娠のシンに、幽霊のレイで娠霊写真」

「なにそれ、新手のAV?」

 健一は一気に覚めたような顔をした。

「お前そんなんだから彼氏でき…」

「黙れ」

 チョップを落として、由梨絵は小馬鹿にしたような表情をする。

 押し黙った健一に、由梨絵はため息をつく。

「で、その娠霊写真がどうしたのよ?」

「んふふ…。よくぞ聞いてくれました。娠霊写真を撮るとね、女の人は妊娠しちゃうんだって」

「なにそれ…やっぱAVじゃん」

 健一は首を横に振る。

「ちがうんだよ。性行為も何もしないのに。妊娠しちゃうの」

「男はどうもなんないの?」

「えっと、だから。写真を男女一組でとると、性行為しなくても二人の子供ができるとか…」

「馬鹿みたい」

 なくなったスナックを恨めしそうに睨みながら、健一は項垂れた。

「まぁ、そういうなって…水子っているじゃん。流産とかしちゃった子供を慰めるための御墓みたいなやつ」

「ああ…隣町の神社にあるやつ?」

「そう、それ。その前で写真撮ると、そうなっちゃうらしい…。子供が生まれたいよーって腹に宿るんだって。今じゃ、不妊治療祈願とかいってネットでも騒がれてるんだぜ」

「ふぅーん」

 健一はにやにや笑うと、カメラを取り出した。

「だからさ、俺とお前で試してみない?」

「…殺すぞ。アンタの子供を孕むぐらいなら死ぬ」

「俺だって、嫌だよ。だから絶対そういうことにはならないし…。おしろそうじゃーん。なんか、写真には百%確実に幽霊が写るんだって。妊娠なんてありえないんだからさ。撮ろうぜー。俺のいとこがさ、オカルト雑誌扱ってて…本物だったら三万で写真買ってくれるっていうんだよー」

 両手を合わせて健一は不器用な上目使いをする。

「分け前は半分よこしな。それでなきゃ嫌だ」

「半分~?五千円じゃ駄目?」

「嫌だ」

「…一万円」

「嫌」

「…分かったよ。一万五千円な」

更新日:2011-04-16 21:44:55

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百物語だぉん(´;ω;`)ガクブル!短編集MAX