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3本目:恐怖のラーメン380円

 いらっしゃいませ。
 ここはあの世とこの世の狭間にある。隠れた名店霊霊庵。
 お客様は何名様ですか?

 …心得ました。

 さぁ、惨番テーブルへどうぞ。
 メニューはこちらになります。

 血が滴るごく厚ジューシーステーキは、英国紳士のお気に入りでございます。
 骨の髄まで滲みるマグマスープは真っ赤な果実の魅惑の味となっております。
 悪魔のように塩辛いドレッシングを振りかけた、仏ノ座と地獄草のサラダは、お客様には少し刺激的かもしれませんね…。
 デザートの杏仁豆腐はおいしすぎて、天にも昇ってしまいそうになるでしょう。

 えっ、お客様は「恐怖のラーメン」を御所望で?
 いえいえ、大丈夫ですよ。すぐに用意できます。お値段も一番お手頃ですしね。

 お料理ができるまで、窓の外に広がる血の…。いえ、夕日で赤く染まる湖と、天に広がる天橋立でもご覧になっていてください。




 おまたせしました。御注文の「恐怖のラーメン」です。
 
 嗚呼、そんなに驚いた顔をしないでください。

 メンマの代わりに入れたのは、でくのぼうの皮膚。 
 なるとの代わりに入れたのは、濁ったものしか知らない眼。
 海苔の代わりに入れたのは、切り裂くことしか知らない爪。
 麺の代わりに入れたのは、阿呆のぐちゃぐちゃ髪の毛。
 スープは老若男女の血液を混合したブレンドのつゆに、出汁には稚児の骨を煮込んだものを使っています。


 さぁ、一口。お食べになってください。
 どうです、おいしいですよね。

 それはよかったです。


 



 そろそろお会計のほうをお願いできますか?

 はい、お値段380円となります。
 



 …お金を持っていない?それはいけませんよね。
 お代を頂けないのなら、見返りを頂きます。

 貴方の皮膚。
 貴方の目。
 貴方の爪。
 貴方の髪の毛。
 貴方の血液に。
 貴方の骨。

 それだけあれば十分です。
 




 それだけあれば…。
 大丈夫ですよ、必要なものはすべて貴方の胃袋の中にあるのですから。

 貴方の食べたもの。もうお分かりになりますよね?
 もっとも、そのがらんどうの肉体じゃあ…。

 わかりませんよねぇ…。







 ろうそく3ほんきーえた。
 ふっ。


更新日:2011-02-08 22:55:53

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百物語だぉん(´;ω;`)ガクブル!短編集MAX