官能小説

成人向けコンテンツについて
R-18

ここから先は未成年にふさわしくない成人向けの文章が含まれています。

18歳未満の方、もしくはこのような小説を不快に感じる方は「入室しません」を選択してください。

上記の内容に同意される場合のみ「入室します」をクリックしてお進みください。

  • 7 / 66 ページ

 今日も新入部員の佐保は、外国の古い恋愛映画をチョイスした。
「好きなの? 恋愛もの」
 尋ねると、「あー……」と言って佐保がちょっと恥ずかしそうに笑う。どうやら、自分の好みを笑われたと勘違いしたらしい。佐竹は「違う違う」と言って訂正すると、「同じようなチョイスをする奴がいたからさ」と説明した。
「前の部長なんだけどね」
 サエも外国ものの恋愛映画が好きだった。どちらかと言うとアジアよりヨーロッパものが好きで、高校の卒業旅行では大好きな映画に出て来る場所をハシゴしたと言っていた。まったく、金持ちのボンボンはやることが違う。すると、佐保が「ああ」と言って、思い出したように笑った。
「確か、副部長のお兄さんでしたよね」
(お兄さん……)
 決して誰もそうは思わないだろうが、確かにサエは高科の『お兄さん』である。よく拗ねたようにプッと頬を膨らませていたサエの顔を思い出し、佐竹は思わず笑う。
「同期だったんだ。あいつは4年で普通に卒業したけど、俺は2年も留年しちまった」
 本当のところは『留年しちまった』のではなく『留年させて貰った』のだが、これは誰にも言えない。その言葉に、佐保が驚いたように目を丸くした。
「え、じゃあ……」
「そ、6年生なのよ、俺。今年で満期」
 ビデオサークルの主だったメンバーも全て4年次だ。撮るなら今年しか無いと思っていたところへ、佐保が入部して来た。奇跡だと思った。小柄で優しい面立ちをした佐保は、十分『女優』になり得る。それは、佐竹にとっては最後のチャンスだった。

 『いつか、僕が書いた台本で映画を撮ってくれる?』
 それは、2年になった頃にサエが言った言葉だった。
 それまでも小説のようなものを書いていたのだろう。見せられたのは、1人の少女の恋の物語だった。何不自由なく育った貴族の娘が、親の事業の失敗によって出来た借金の形に、成金男の元に嫁がされることになる。娘は最後の夏を1週間だけ、やはり手放すことが決まっている海辺の別荘で過ごしたいと父親に頼む。そこで娘は1人の青年と出会い、激しい恋に落ちるのだ。
 途中までしか書かれていないのを見て「ラストは決まってないのか?」と尋ねると、サエが原稿を見つめて「うん」と答える。
 『ラストはまだ決まってないんだ……』
 撮ることが決まったら続きを書くよ、とサエは言った。それきり、未だに少女の恋は止まったままだ。そのサエにも、もう丸一年会っていない。『サエに会いに行く時は映画を撮る時』と、ずっと心に決めていた。それは、男の意地でもあり、矜持でもあった。

「だからさ、力になってよね、拓夢ちゃん!」
 ニッと笑って言うと、佐保がその言葉に「はい!」と答えて微笑む。興奮したのか、頬が赤く染まって堪らなく可愛い。これではカタブツの須崎もイチコロだろうと考え、佐竹はその男の顔を思い出して内心で溜息をついた。
 苦学生の須崎は毎日バイトをしている。だから今までは用がある時以外は部室になど顔を出さなかったのだが、佐保が入部してからは毎日のように来ていた。しかし、顔を出してもすぐにバイト先にすっ飛んで行かなければならないので、その後の進展は無さそうである。放課後が忙しいなら昼休みにでも誘えばいいのにと思うのだが、自分がそこまでアドバイスしてはかえって誘えなくなってしまうであろう。そう思って黙っているのに、自分と佐保が仲良くしているのが気に入らないのか、須崎の表情は日増しに険しくなっていく。何とも言えず歯痒いが、しかし、一番大事なのは須崎がこの佐保を『何としても欲しい!』と思うことなのだ。他人に興味の無い須崎が初めて示した『執着』に、佐竹は思わず笑みを浮かべる。そして、どうやらこの可愛い新入部員も、須崎に関心を示しているらしかった。

更新日:2011-01-23 18:12:53

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

ラブレターⅡ(オリジナルBL) R-18