官能小説

成人向けコンテンツについて
R-18

ここから先は未成年にふさわしくない成人向けの文章が含まれています。

18歳未満の方、もしくはこのような小説を不快に感じる方は「入室しません」を選択してください。

上記の内容に同意される場合のみ「入室します」をクリックしてお進みください。

  • 37 / 66 ページ

「いらっしゃいませー!」
 店の引き戸をガラガラッと開けると、従業員の威勢のいい声が出迎える。佐竹は暖簾をくぐって中に入ると、グルリと店内を見渡した。店内は手前がテーブル席で奥が座敷になっており、左手にちょっとしたバーカウンターがある。そのバーカウンターにも足の高い椅子が何脚か置かれており、好きな酒を注文して飲めるようになっていた。
「うわッ! 佐竹くんッ?」
 途端に黄色い歓声がキャーッと座敷の方で上がり、佐竹は「オス」と答えて女性陣に手を挙げる。入り口に一番近いテーブルに視線を向けると、元クラス委員長の中沢が「よお」と言って破顔した。
「久し振り。変わりないか……ってお前は随分変わったな、佐竹」
 佐竹の頭を見ながら楽しそうに言う中沢に、佐竹は髪を撫で上げながら「そうか?」と返す。確かに高校の頃は黒かった髪を今はツンツンに立ち上げているので『随分変わった』と言えるかもしれない。
「お前は変わりないな、中沢。すぐにわかったよ」
 佐竹の言葉に、中沢がフッと口の端を上げて肩を竦める。
「相変わらず面白みの無い顔だろ?」
 中沢は自嘲気味にそう返すと、佐竹から会費を受け取って卓上の名簿に印を付けた。

 中沢は真面目な男だ。クラスのムードメーカー的存在でいつも派手に馬鹿やってた佐竹と違い、勤勉で実直で努力家で担任からの信頼も篤かった。当時は公務員ばりの黒縁眼鏡をかけていたが、今はお洒落に気を遣うようになったのか縁無しの細身の眼鏡をかけている。佐竹がかけたらいかにも軽い遊び人風に見えそうなそれも、中沢だと知的なイメージがアップされて実によく似合っていた。
「佐竹クン、こっち!」
 受付を済ませて再び店内を見渡すと、一番奥にいた女性陣からお呼びが掛かる。見ると、異性の中では一番仲の良かった安藤静香がこちらに向かって手を振っていた。
「久し振り。今何してるの?」
 さっそく『出世したか』と問われて、佐竹は苦笑しながら「就活中」と答える。「お前は?」と尋ねると、静香は同じように苦笑しながら「婚活中よ」と答えた。
「就職して3年が勝負だからね」 
 それを過ぎると『同僚』という意識が強くなり過ぎて男女の緊張感が無くなるのだと言う。そんなもんかねえ、と言うと、そんなもんよ、と静香が答える。
「ところで、今はイイ人はいるの?」
 静香が佐竹の顔を覗き込みながら唐突に尋ね、いきなり問われた佐竹は思わず笑った。
「いきなりだねぇ。なに、俺なんかに興味あんの」
 ニヤリと笑いながらからかうように問うと、静香もニヤリと笑って答える。
「あたしじゃなくて、他の子が気にしてんのよ」
 途端に、2人の会話に耳をそばだてていたらしいその他の女性陣が、一斉にニヤと笑って互いに顔を見合わせる。
「なに俺、モテ期?」
 思わず冗談を言って笑うと、その言葉に静香がフンと鼻を鳴らして目を据わらせた。
「聞いたわよ。『篠崎恵子』をフッたんだって?」
「えっ?」
 誰に聞いたんだそれ、と問おうとした佐竹は、静香も自分たちと同じ中学出身だったのを思い出す。「仲良かったのか?」と訊ねると、「家が近いからね」という答えが返って来た。
「あんなイイ娘をもったいない」
 静香の言葉に、佐竹は笑いながら「だからだよ」と返す。
「俺にはもったいな過ぎる」
「キザね~~~!」
 佐竹の言葉に静香はそう言ってアハハと笑うと、再び佐竹の顔を覗き込むようにしながら「それで?」と尋ねた。
「今はイイ人はいるの」
 ズバリと問われて、逃げられないと悟った佐竹は仕方なく頷く。かと言って付き合っているわけでもないので「たぶん」と付け加えると、何が面白くなかったのか再び静香が盛大にフンと鼻を鳴らした。
「あんたは昔からそうだったわね、佐竹護。そんな中途半端な恋愛ばかりしてると、本気の相手にも逃げられちゃうわよ」
 フラれてから泣いたって遅いんだからね、という静香の忠告に、佐竹は苦笑混じりに「はいはい」と答える。潮時とばかりに退散してテーブル席に移動すると、今のやり取りを面白そうに眺めていたらしい男共が「お疲れ」と言って佐竹に椅子を勧めてくれた。みんなしっかりスーツを着ていて、社会人の顔になっている。
「お勤めご苦労さん、佐竹。お前のお陰で今日は説教されなくて助かるよ」
 隣の席の河本が言い、周りの面々がウンウンと頷く。地元組は結構マメに集まって飲んでいるらしく、静香もそのメンバーらしかった。
「ところでさっきのアレ、ホントなのか」
 河本が佐竹の顔を覗き込みながら面白そうに尋ね、佐竹はしらばっくれて「アレ?」と返す。
「女だよ。さっき安藤に訊かれてただろ」
 河本の言葉に、佐竹はとぼけた顔で「あー、あれね」と答える。河本は佐竹がはぐらかそうとしているのに気付くと、ヒョイと眉を上げて意外そうに言った。

更新日:2012-05-05 21:34:05

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

ラブレターⅡ(オリジナルBL) R-18