官能小説

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「お久し振りです」
 社長室の入り口で声を掛けると、大きなデスクで書き物をしていた中年の男が顔を上げる。社員と同じモスグリーンの作業服に白のワイシャツ。胸元にはこのクソ暑いのにしっかりとネクタイを締めている。白髪混じりのその男は声の主が佐竹だと気付くと、途端に人好きのする顔で破顔した。
「護か、よく来たな。まあ入れ」
「失礼します」
 佐竹は伯父、佐竹正一の言葉に一礼すると、社長室まで案内してくれた若い女性事務員にも頭を下げて中に入る。頬を染めてぽーっと佐竹の横顔を見上げていたその事務員が慌てて下がると、すぐに別の若い女性事務員が茶の乗った盆を持って入って来た。
「まあ座れ。いつ来たんだ」
 勧められた応接セットのソファに腰掛けながら、佐竹は「今です」と答える。空港から直接来ました、と言うと、佐竹の言葉に正一が楽しそうに笑った。
「あいかわらず忙しいのか」
「社長ほどではありません」
 若い女性事務員が頬を染めてチラチラと佐竹の顔を盗み見ながら、テーブルの上に茶を置いて出て行く。正一はその後ろ姿を見送ると、佐竹に視線を戻してニヤリと笑った。
「色男。下でナニして来たんだ」
 ちなみに、この会社の社長室は二階にあり、一階には事務室がある。
「や、別に。伯母さんにお土産を置いてきただけですけど?」
 正一の妻はその事務室で経理を一手に引き受けている。
「色男は立ってるだけでモテモテってか。ウチの社員に手を出さないでくれよ」
 正一のジョークに佐竹はハハハと笑うと、「伯父さんこそ」と返す。
「昨夜も外泊だったそうですね。伯母さんにあまり心配掛けちゃダメですよ」
「ハハハ」
 佐竹の言葉に正一は楽しそうに笑うと、おもむろに机の引き出しから書類の入った封筒を取り出す。中から出てきたのは佐竹の写真が入った履歴書だった。
「健次から預かったんで、とりあえず候補には入れてあるが」
 『健次』とはもちろん佐竹の父親の名前で、『候補』とは新入社員の面接の候補である。正一はそう言うと、ジッと佐竹を見る。
「もう『いい』のか?」
 正一の言葉に、佐竹はグッと唇を引き結ぶ。そして、二呼吸ほど伯父の顔を見詰めると、「すみません」と言って頭を下げた。
「もう少しだけ足掻かせてください」
「そうか」
 正一はひと言そう言うと、佐竹の履歴書を横に持ちかえる。そして、その端の中ほどを両手指で摘まむと、佐竹の見ている前でビリッと二つに破いた。
「男ってのは案外弱い生き物だからな。逃げ場を残しておくと後々色々手詰まりを起こす」
「ありがとうございます」
 佐竹は伯父のエールに深々と頭を下げる。特に意識はしていなかったが、履歴書を破かれたことで心の中にあったモヤモヤが一気に払拭されたような気がした。
「ところで、今夜は家で飯を食うのか?」
 暫く泊まっていくんだろう、と問われて、佐竹は「はい」と答える。伯父は「そうか」と答えると、「じゃあ」と言って言葉を継いだ。
「今夜はウチに泊まりに来い。そうだな、7時がいいか。久し振りにゆっくり酒でも飲もう」
 健次には俺から言っておこうか、と問われて、佐竹は思わず苦笑する。俺もう24ですよ、と言うと、正一は「だからだよ」と言って笑った。

更新日:2011-08-19 22:24:18

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